【like an angel of the devil】(4)〜円の場合〜

 今夜の装いは【Black by moussy】のツィードのジャケット。
 けどマスターは興味が無い様子でさっさと脱がして行く。
 『あぁ、まって。』
 kissの合間に円がマスターを制止しようと言葉を掛ける。
 しかし、マスターは動きを止めようとしない。忽ちランジェリーだけの姿になってしまう。
 『あぁいや。恥ずかしい。』
 円には明るい所で男性にランジェリー姿を見せた事が無い。
 エレガントなヨーロピアンクチュールを思わせる、大人の女性の洗練されたセクシーをメイクする、【アンプリスィット】の【アゾット】が美しいフォルムをマスターの眼前に提供された。
 マスターは円の豊満な肉体を包むセクシーなランジェリーの上から、女らしさを主張する乳房を掌で包み込むように触り始める。
 『あっ、ううん。いや。』
 円が可愛い声を上げる。
 彼はこんな事はしない。
 暗がりの中で、円が裸になってベッドへ潜り込むまで大人しく、じっと待っている。
 『あぁん。』
 マスターの掌が双房を揉みしだく。
 左右の乳房が拉げ、形が如何様にもされてしまう。
 しこってきた乳首を両親指で押し潰し、廻すように動かす。
 『はぁぁん。』
 『あっあっ。』
 円は初めての感覚に声を押し殺す事も出来ない。
 彼なら・・・少しの間だけ乳房を揉んで、乳首に吸い付くだろう。
 マスターの愛撫は執拗だった。決して一点に集中しないように、左右の乳房を丹念に刺激する。
 胸の谷間がじっとり汗に滲み、息を乱した円の双丘はふいごの様に上下してしまう。
 強く弱く、ジワジワと乳房が揉まれ、親指と人差し指に挟まれた両乳首がギュッと摘ままれる。
 『あぁん、はぁ。ぅぅ。』
 ブラが外されていた。
 暖かい掌が双丘を鷲掴み、前後左右に揉みしだかれる。
 その時になって漸くマスターは、円をお姫様抱っこしてリビングに連れて行った。
 壁際の武骨なパイプベッドの上に身を横たえた円は、恥ずかしげに両手の掌で顔を覆った。
 その手をマスターに外されると、直ぐにキスの嵐が円を襲う。
 唇も瞼も額も、耳たぶも首筋もマスターの唾液によって汚されて行く。
 マスターの唇が鎖骨の上をさまよう頃には、無意識の内に円の両太ももが擦り合わされていた。
 唇はそのまま下へ下へと移動し、双丘の周りに赤い痣を付けて行く。
 『あっ、そんな、ダメ。』
 マスターの手が腰の辺りを摩り唇がまだ桜色した小さな頂きをねぶる。
 『あっあっ、あぁ。あん、あん、あぁ。』
 40男の執拗な責めに円は手放しではしたない声を張り上げている。
 マスターの脛毛の感触を太股に受け、益々円は乱れる。
 その足が円の両足を割って入りこみ、女の源泉に膝頭が押し付けられる。
 舌先がおへその窪みを通り過ぎ、ショーツの端に差し掛かる。
 腰に当てられていた指がショーツをすくい上げ、円自身をマスターの眼に触れさせようと、ゆっくりと下げられて行く。
 『あぁいや。恥ずかしい。ダメ、ダメです。』
 押し下げられたショーツと共に、円の翳りが露わになって行く。
 綺麗に処理されている恥毛の剃り後にマスターの唇を感じた円は、恥ずかしさの余り、全身に力を込めた。
 膝頭が微妙なバイブレーションを送り込み始める。
 円は急速に力が抜けて行くのを感じた。
 身体の中心から波の様なものが全身に広がり始め、円の抵抗を奪って行く。
 膝頭が当たっている処に熱い湿り気を感じたマスターは、一気に円のショーツを足首まで引き下ろした。
『あっ、見ないで。』
 弱々しい声で、哀願したが、マスターの力強い手で左右に割り裂かれてしまった。
 黒々しい翳りの下に息付く円の女は、いまだ慎ましやかな佇まいを見せていた。
 マスターが顔を埋めて、円の亀裂に舌を伸ばす。
 舌の刺激を受けて円の亀裂は、鳳仙花の実の様に弾け、綺麗なピンク色の柔肉をマスターの前に晒した。
 【綺麗だ。】
 この部屋に戻ってきたマスターの2度目の発声が、円の女を見た感想だった。
 『あぁ、恥ずかしい。』
 この日何度目かの円の恥じらいの声が上がる。



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【like an angel of the devil】(3)〜円の場合〜

 『マスター。カクテルで無くても良いの。何か記念になるお酒無いかしら。・・・こうして4人揃って飲めるのも何時になるか判らないから。』
 円が少し寂しそうに笑う。
 【そんな事は無いでしょう?何時でも逢えますよ。】
 事情を知らないマスターが慰めの言葉を言う。
 円が小声で囁く。
 『彼がね・・・・嫌がるの。【女は家庭に居るべきだ。働くなんて僕は好きじゃ無いな。】・・・父がね、工場を経営しているの。この不況で苦しいの。・・・・・彼のお父様が・・・』
 円の顔が憂いに翳る。
 【どうぞ。】
 マスターがスコッチいスキーを差し出す。
 【ロイヤル・ハウスホールド1707記念ブレンドです。】
  ブキャナン社が英国王室御用達として製造しているお酒です。昭和天皇が皇太子時代に訪英した際にプレゼントされ、大変気に入られた様子に特別に日本だけに輸出が認められた。一般に飲まれるのは日本だけかもしれないお酒で、本国でも容易には飲めない。
 【この1707記念ブレンドは大英帝国誕生300周年を記念してブレンドされたものです。】
 円の口の中で複雑なフルーツの風味が拡がった。その後スモーキーさが加わり、やがてスモーキ―さが薄れて行くと、オランジュの甘い風味が、口にする者を惑わす程の官能的な味わいとなって、オレンジの風味が口の中を覆い尽くしたままフィニッシュへ向かった。
 『美味しい。』
 『私も今後ハウスホールド・・・・になるのよね。・・・・わたしに相応しいわ。』
 円の目が心なしか潤んでいる。
 その時、barの柱時計が0時を告げる。
  『お代わり。』
 マスターがシェイカーを振るう。
 『なによ、これ。』
 一口飲んだ円の声に怒りの成分が含まれていた。
 【シンデレラ。】
 カクテルグラスの中には、オレンジジュース。レモンジュース。パイナップルジュースがシェイクされて入っていた。
 つまりノンアルコールのカクテルだった。
 【12時を過ぎました。お嬢様はお家へ帰る時間です。】
 『・・・もっと酔いたいの。ねえ、マスター夢から覚まさないで。』
 【夢を見るのには人生は長過ぎる、愛を育むのには人生は短過ぎる。】
 『やだ、くさいセリフ。それに、意味も不明だし。』
 【あれ?決まりませんでした?おかしいなぁ?これで円さん、堕ちるかと思ったのに。】
 『冗談、マスターになんか、堕ちませんよ。』
 落ち込んだ心が少し軽くなった。
 彼を嫌いな訳ではないし、家から1歩も出られない訳でもない。ただ独身の頃の様に自由に時間を使えないだけ。
 『ね、今の本当にわたしを口説いてくれたの?』
 【さあ?、40過ぎの男が、若いお嬢さんに相手にされると思いますか?】
 マスターが冗談めかして笑う。
 『シンデレラの魔法は12時を過ぎると解けるの。そこからは貧しいただの少女よ。』
 【青少年保護条例違反で捕まるかな?】
 『わたしは女よ。青少年じゃないわ。』
 傍で聞いている人がいたら、吹き出してしまいそうなセリフ回しに円は愉しげに笑いだした。
 『ありがとうマスター。』
 マスターは花梨に呼ばれてカクテルを作りにその場を離れて行った。
 そしてまた外へ出て行く。
 
 カチィ〜ン。
 【ほぅー。】
 白い輪がゆらゆらと辺りに漂う。
 【・・・あそこに。】
【テレビ塔のイルミネーションが見えるだろう?あの隣のマンションの7階777号室。】
 マスターが後ろも見ないで、鍵を差し出した。
 円はそれを受け取ると黙ってbarの中へ入って行く。
 マスターは煙草を思い切り吸いこむと暗い夜空に向かって吐き出す。
 【マズイな。・・・・夜が長過ぎたな。】
 
 部屋の中は殺風景だった。
 壁際に置かれた武骨なパイプベット。
 スチールで出来たスケルトンの収納ラック。
 壁に掛けられたアンディ・ウォーホールのシルクスクリーンのマリリン・モンローと窓際の観葉植物だけが存在を主張している。
 この部屋以外の部屋には生活臭が無い。
 台所とこの居間が彼の空間だ。
 メールが入る。
 【棚の中段に木箱が有る。開けて飲んでいてくれ。】
 たった1行の短いメール。
 箱の上段中央に四角く囲まれた【BUSHMILL】その下に【MALT】と21.
 北アイルランド産のお酒。
 アイリッシュ・ウィスキー、シングルモルト。
 世界で1番古い醸造免許を赦された蒸留所のモノだった。
 口当たりがとても滑らかでスコッチの様なスモーキ―さが、無いのに甘い。
 またメール着信音。
 【あと5分。鍵を開けておいてくれないか。】
 また一口啜って、玄関に向かう。
 ドアの前に立つのと同時にチャイムが響く。
 覗き穴から確認してドアの鍵を開けた。
 目の前にバラの中に白いマーガレットをあしらったブーケが差しだされる。
 キュートな花束。マスターの顔からは想像もつかないプレゼント。
 【ようこそ。like an angel of the devilへ。】
 どちらの意味だろう?
 天使か悪魔か?
 自分の立場を考えると後者の方かな?
 この部屋に入った時から円には羽が生えていたのだろう。
 二人の唇が重なり合うまで3秒も掛らなかった。
 マスターの唇にはホープスーパーライトの煙草臭い匂いが染みついている。
 煙草の匂いが嫌いな円だが、今は気にならない。


【like an angel of the devil】(2)〜円の場合〜

 スッと円の前に【ホワイト・レディ】が差し出された。
 【御結婚おめでとうございます。店からのささやかなプレゼントです。】
 マスターがさりげなく言葉を添える。
 『ありがとうございます、マスター。』
 『あ〜あ、なかなか来られなくなっちゃうなぁ。お酒も家で飲むだけかぁ。ねえ、マスター。このカクテルの作り方教えて。』
 【ドライ・ジン。コアントロー、レモンジュースをシェイカーに氷と一緒に入れて、シェイクします。】
 『コアントローって?』
 【フランス産のリキュールの一種です。】
 円は携帯を取り出すとマスターに向けた。
 『もっとレシピを教えて。』
 赤外線通信を終えるとマスターが言う。
 【コアントローはホワイトキュラソーの一種でコアントロー社が製造しています。無色透明オレンジの香りと、まろやかな甘さが特徴なのですが、氷等で冷やすと淡く白濁する。これがホワイトキュラソーと言われる所以です。】
 『マスターは何種類のカクテルが作れるの?』
 【さぁ?数えた事が無いから。】
 『マスターが一番好きなカクテルは?』
 【わたしは飲めないんです。】
 『え?それなのにバーテンダーを?』
 【味はお客様が飲んで確かめてくれます。美味しくなければ2度とこの店には来ない。】
 『随分危険な賭けですね。』
 【そうですね、でも結婚も同じですよね。独身の私には危険な賭けに思えますけど、だって僅かの間のお付き合いで一生を決められるんですから。あっ、失礼しました。】
 言われてみれば、大きな賭けだ。円もそう思った。
 マリッジブルー。
 多分そんなものなのだろう、この所実は迷い始めている。
 彼は確かに優しくて、清潔感溢れる人、何より頼り甲斐が有る。堅実で真面目な人だ。
 それなのに、ドキドキ感が無い。次に何をするのか時々先に読めてしまう。
 贅沢な悩みだと皆言うだろう。特に鈴や彼女は。
 自分でもそう思う。でも、・・・・・冒険を夢見ていた。
 危険な香りに包まれて見たい。
 ギリギリの攻防を・・・・この身が焦れる恋がしたい。
 『はぁ〜。』
 無謀な夢。
 マスターの目が微笑んでいる。良かったね、と言う祝福と平凡な人生を選んだ私への憐憫。
 私にはそう見えた。
 【どうぞ。】
 またしても目の前にカクテルが置かれた。
 【ギムレット。】
 『何故このカクテルを?』
 【チャンドラーの小説の中でレノックスが言ったセリフですよ。『I suppose it's a bit too early for a gimlet』】
『ギムレットには早すぎる。?』
 【ええ、そうですが、小説のタイトルを意識しました。円さんとは『長いお別れ』ですから。】
 アメリカのハードボイルド小説の作者レイモンド・チャンドラーの有名な探偵小説。
 フイリップ・マーロウが主人公のハードボイルドの中のセリフだった。
 そのほかにも有名なセリフが有る。
 『If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be aliv』
【男は・・・・『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きて行く資格が無い。』】
【『プレイバック。』だね。円さんに捧げるセリフに相応しいのかな。】
 【どうぞ、お幸せに。】
 切なさがこみ上げて来た。
 独身最後の夜でもないのに、なんだか自分だけが別世界に行ってしまうような気分になる。
 『マスター。お名前を聞いていなかったわ。』
 【マスターで結構です。】
 何故か拒絶された気がする。胸がキュンと痛む。
 マスターは花梨のカクテルを作っている。そして鈴のカクテル。どんどん私から離れて行く。
 あぁもう酔ったのね。
 帰らなくては。
 その前にお化粧を直して・・・・・
 誰の為に?何のために?
 いま何時?
 マスターが微笑んでいる。しなやかな指がシェイカーをシェイクしている。
 マスターがそっとカウンターを離れる。
 チーフに変わっていた。
 急いで裏口からそっと外を覗く。
 カチッ、ホープスーパーライトの箱が閉じられジッポライターの蓋が閉じられる。
 【ふぅ〜。】
 紫煙が立ち込める。
 煙が沁みたのか、目を細めて虚空を見た。
 痛い。チクリと胸が痛む。
 男の人の喫煙は嫌いだった。
 彼も煙草は吸わない。・・・・しかし夜の帳に紫煙が一筋、映画の場面がよみがえる。
 ボギーもこうして吸っていた。
 映画の様にセクシーな立ち姿。寂しそうな背中。
 そっとその場を離れた。
 見てはいけない風景。
 Barの中には、花梨、鈴、彼女が小粋にグラスを傾けている。
 こうして4人で飲むのは多分最後の夜。


【like an angel of the devil】(1)

 今は何日で、何時頃だろう?明るいのか暗いのかそれすら分からない。
 確か金曜日の飲み会で、2次会までは覚えている。
 その日、同僚の結婚退職のお祝いにささやかな酒宴を開いた。
 幹事はわたし。
 30人いるフロアー全員を対象に、企画した。
 数人の脱落者(具合が悪い人1名、派遣社員の人5名、母子家庭の人2名)は出たが、この手の飲み会にしては出席率は近年に無く最高だった。
 それも、今夜の主役、総務課のアイドル円(まどか)と花梨(カリン)のお陰だろう。共に私の同期。そして鈴(リン)とわたし。
 4年間一緒に働いて一緒に遊び、お互いを親友だと思って来た。
 2人の恋も、もちろん相談を受けていた。
 わたしと鈴の恋も相談した。
 彼女らは実り私達は散った。ただそれだけ。
 円も花梨も職場結婚。
 半径2メートルの恋、わたしの場合は半径50km、鈴は不明、その差が今の境遇の違い。
 些か御酒を頂き過ぎた。わたし以上に鈴も円も花梨も飲んでいた。
 惜しまれつつ1次会は無事に終了し、皆と別れて4人で街に繰り出していた。
 4人とも酔ってはいたが正体を無くす程では無かった。
 渋いドアノッカーを叩いて、店に入って行く。
 4人行きつけのbar。
 【like an angel of the devil】
 ここは初め鈴に連れられて来たお店。いつの間にか常連になっていた。
 オーナー兼マスターのいつもの優しい笑顔。
 スツールに座ると黙って、最初の1杯が配られる。
 【モスコーミュール。】
 10オンスタンブラーに注がれたライムとジンジャーエールの喉越しの爽やかな味わい。
 酔った私達には素敵な選択。
 スミノフ・ウオッカとローディアル・ライム。そしてジンジャーエール。これは絶対ウィルキンソン、カナダドライじゃダメ。
 ウオッカとローディアル・ライムをタンブラーに注ぎ、1/4カットライムを絞り入れ、冷えたウィルキンソンで満たし軽くステア。
 これだけの簡単なカクテルが酔った喉に爽やかさを加味する。
 マスターはその時々の私達の気分で最初の1杯目を出してくれる。
 その日酔った私達は強いお酒から入った。
 円と花梨の前に、【ラスト・キッス】のグラスが置かれた。
 私と鈴には【スカーレット・レディ】。
 どちらもラムベースのカクテル、カクテルについての蘊蓄を聞くのも、この店だと嫌みが無く聞ける。蘊蓄と言う程のものでもないが。
 『マスター?何故このチョイス?』
 【円さんと花梨さんには、そうですね結婚前夜の、独身最後の夜に最後のお酒を噛みしめて飲む。と言うイメージでしょうか。】
 『じゃぁ、私達は?』
 鈴が聞く。
 マスターがにやりと笑う。
 【文字どうりに訳すると、『緋色の女』『深紅の女』・・お二人のイメージです。】
 私はマスターの含み笑いが気になったので、聞いて見た。
 『で、裏は?マスター。』
 【・・・scarlet woman と書きますと。・・・『売春婦』つまり『みだらな女』と言う意味になるんです。結婚されずに独身を謳歌する、お二人を茶化して見ました。】
 今度はマスターが澄ました顔で言う。
 『モー酷い。』と鈴。
 『あーヒド。』とわたし。
 『ん、おいしいわぁ。』
 間の抜けた声は花梨だ。
 『ラスト・キッスってどう作るの?』
 【用意するのは、ホワイト・ラム。ブランディー。レモンジュース。それらと氷を一緒にジェーカーに入れシェイクするだけ。カクテルグラスに入れてさぁ出来上がり。】
ショートなので、早めに頂く。
 【ついでにスカーレットは、ホワイト・ラム。カンパリ。マンダリン・リキュール。フレッシュ・レモンジュース。マラスキーノ。オレンジ・ピール。オレンジ・ピール以外と氷をシェーカーに入れシェイクして、カクテルグラスに注ぐ。最後に三角にカットしたオレンジ・ピールをグラスのエッジに飾って終わり。】
 これもショート。
 全くここのマスターは皮肉屋なんだわ。


【映像の中の女】

それが送られてきたのは、6月のある土曜日の夕方だった。
 玄関のブザーが鳴った。
 いつもなら妻が応対するのに、何時までも呼び鈴がなっている。
 【あぁ・・出掛けるって言っていたな。忘れていた。】
 玄関のドアを開けると、胸元に黄色い背景を擁した黒い動物のワンポイントが目に飛び込んできた。
 「お届けモノです。受け取りをお願いします。」
 差し出されたのは何の変哲も無い、B5番の紙袋に梱包された包みが一つ。
 印鑑を探して居間をうろちょろして漸くTV台の下の文箱の中にそれを見つけた。
 受け取ったそれの差出人に見覚えが無い。
 宛名は確かに私である。
 居間に持ち帰り、中身を開ける。空気の入った緩衝材に包まれた物が入っていた。
 指でプチプチ潰した経験が誰にもある、例のアレ・・プチプチである。
 それを外し手中身を確かめる。
 DVDケースが1枚入っている。タイトルは無く、市販の格安DVD―RW、恐らく10枚組みで8、900円のモノ。
 私は【しまった。アレかな?】と思わず呟いてしまった。
 子供が学童になると途端に増える学習教材の案内や塾、家庭教師派遣の誘い。
 その中には送り付け商法に近いものもある。勝手に送り付けて開封したら請求書が出て来るといった按配だ。
 その類かな?と思った私は、つい舌打ちをしたのであった。
 予想に反して中にあったのはケースが1個と中身のディスク。
 表を良く見ると小さな文字で番号が振られていた。
 私はディスクケースを開けてDVDをデッキにセットした、
 映像が流れ始める。
 どうやらドライブの様子を写したものらしく車窓から景色が流れ出している映像。
 『ここ懐かしい。・・・。以前来たことが有るわ。』
 女の声が聞こえる。
 聞き覚えのある声ですが、自分の知っている声色より幾分明るめの声だったので、聞き流した。
 【一緒に出かけるの、久し振りだね。良く時間が取れたね。】
 『もう・・そんなこと言わないの。判っているでしょう。』
 車内の会話はごく普通の恋人同士の会話に聞こえた。
 (何だ拍子抜けだな。どんな映像が流れるかと思えば、ごくまともな映像だ。)
 【あ〜あ、一泊の旅行は短いなぁ。ねえ、今度はもう少し長く行けない?】
 『ダメよ。それにあなただって。』
 【お互い儘ならず、と言う訳か。】
 『そうよ。何度も話し合ったでしょう。』
 何やら会話の方向が普通の恋人同士の会話では無い様子。
 (これって?_)
 『私は厭よ。今の生活を壊すのは。』
 【判っているって。俺も同じ。】
 【でも・・・お陰で昨夜の君は激しかったな。最近していないの?】
 『バカ。・・・しないわよ、あなたに悪いもの。・・・・あなたはするの?』
 【あぁ、不自然に思われないようにしなくちゃね。・・・義務と言う奴さ。】
 『不潔よ。・・・信じられない、これだから男って嫌ね。』
 【オイオイ。そんな事を言っても、君だって・・・求められたら断れないだろう?】
 『私は断るわ。あなた以外の人に触らせたく無いもの。体調が悪いと言えば、大抵大丈夫よ。』
 【悪い人だなぁ。】
 『あなたがそう仕向けたのよ。』
 車が駐車場らしき空間に入る。
 『ねえ。ここでして。』
 【なんだい?昨日は満足しただろう。?】
 『うん。・・でも・・・したくなっちゃった。』
 男が左手を助手席の女に伸ばしている。
 左手はスカートの裾から中に伸びている。
 『あぁ。・・・もっと触って。』
 【もう、こんなに濡らして。・・・スケベな身体だ。】
 『あなたがイケナイの。・・こんなカラダにして。・・あぁん。ソコ・・強く・・触って。』
 【指が喰い千切られそうだ。】
 『そんな・・恥ずかしい事・・・言わないの。』
 【このままじゃぁ、シートが汚れる。・・・休んで行くか?】
 『うん。もう、我慢出来ない。』
 また車が移動する。
 次に映像が写ったのは部屋の中だった。
 『先にシャワーを浴びさせて。下着が濡れて気持ち悪いの。』
 【あぁ、スグに行くよ。】
 バスルームに消えて行く女の後姿が映し出される。
 背が高く、スリムな体型である。
 また場面が変る。
 バスタオルで髪の毛を拭いている女のシルエットが大写しで見えた。
 男が女の前に立つ。
 女は手を男の腰に当て、顔を男の股間に近づけて行く。
 【ふっ・・随分上手くなったね。】
 『フゴ・・』
 女は男のシンボルを咥えたのだろう。返事は言葉にならない。
 【いいぞ。そう・・裏筋に舌を這わせて。・・・そう、上から唾液を垂らして。】
 【うぅ。・・・イヤラシイ眺めだ。】
 ここでカメラが大きく揺れた。
 真上から女の頭を写しだしている。
 男の手が女の額に掛かり、少し後ろへ押した。
 女はその動きに合わせて、顔を少し離す。
 男のシンボルの先が女の唇の中に消えては現れる動作を写す。
 音声がピチャピチャ。ジュプジュプ。クチュクチュ。べチャべチャ、音を拾う。
 生々しい音だった。
 ふと映像を良く見ると、男の足が片方少し前に出されていた。
 女の腰が男の脛の前で上下に動いている。
 太股で脛を挟み、上下に磨っている。
 脛はヌメヌメと光を反射している。
 女の動きがイヤラシイ。
 【ウッ出すぞ。】
 唐突に男の声が響く。男の尻が小刻みに震え、尻肉が強張る。
 映像が唇から下を写しだす。
 唇から顎に掛けて、白濁液がこびり付いている。
 【また、溢したね。】
 『はぁ〜。ゴメンなさい。何度しても全部飲み込めないの。あなたの濃いんですもの。』
 『今度膣(なか)で出して膣(なか)で全部受け止めるから。・・・あなたのモノを私に頂戴。』
 女は艶の有る声色で男を誘う。
 私は不倫セックスを見ている事にドキドキしながら、映像に引き込まれて行く。
 男も女も顔が見えない事で、色々な想像が頭をよぎった。
 気になる近所の奥さんやお隣のご主人の姿を思い浮かべて悦になっていた。
 『ねえ、少し休んで。あなたも若くないんだから、直ぐには復活出来ないわよね。』
 【あぁ、1度のセックスで2回も3回も出せないよ。・・・君は逆に若い頃より激しくなったね。何度も求めて来るようになった。】
 『だって・・感じるんですもの。・・・セックスする度に身体がバラバラになりそう。もう、本当にヤバいわ。・・・あなたに抱かれていないとどうしようもなくなってしまいそうよ。』
【ふ〜ん。女の感じ方は良く判らないけど、・・・つまり、俺じゃないと感じない、と言う事?】
『そうねぇ、相性が良いって事かな。・・・愛しているのは夫、でも、セックスはあなたとだけしたい。』
【本当に女って怖いな。心と身体は別ってか?そんなに割り切れるものなの?】
『あら、じゃぁ心も受け止めてくれるの?』
【・・それは・・無理。】
『ほら、男の方がズルイ。女は受け身なの。男の態度でどんな風にも変るわ。・・あなたが望まないから、私はこうなったの。』
【しかし、君の旦那も気の毒だな。間男に妻が好きなようにされているのに、気付かないなんて。】
『男なんてそんなものよ。自分の妻が髪型を変えても気が付かない。着る洋服の趣味が変っても気付いてくれない。下着が派手になっても見向きもしない。何時も自分が知っている女だと思っている。毎日毎日変らない生き物だと思っているのね。女だって、毎日毎時間毎分毎秒、何かしら、変化しているのに。身体の具合、感情、その時々で違うわ。相手をちゃんと見ているから、男の浮気も直ぐに気が付くの。』
【なるほど。】
『あなたは少なくても、髪型や洋服の変化に気付いてくれるわ。そんな小さな事が女には嬉しいの。自分の事を見てくれる存在がいると安心するの。だから・・』
【だから、なに?】
『言っちゃおうかなぁ、どうしようかなぁ?・・・あのね、心も傾いているわよ。』
『ね、して。』
女が男に覆い被さって、両手でお横の顔を挟みこむ。
 濃厚なキスをすると身体を下の方にずらし、男のシンボルに頬ずりした。
『可愛い、食べちゃいたい。』
女は真上から男を咥えた髪の毛が邪魔して顔が見えない。
口元だけが大きく開きシンボルを飲み込んでいるのが見えるだけだった。
男が上体を起こして女に何か言う。
女は身体を動かして上下を逆にした。
女の股間が男の目の前に差し出される。
 画面には赤い色をした亀裂が尻のあわいに見えている。亀裂に掛かる黒い翳りがエロい。
 男の舌が亀裂に潜り込む。ピチャピチャ水音が微かに響いた。
 女は股間を濡らしている。男は唇をあてズズッと啜る。
 『あぁぁ、気持ちイイ。いいの。』
 女はいつの間にか男のシンボルから口を離していた。
 代りに握った手を上下に擦りたてている。先走りの液が女の手をヌルヌルに汚していた。
 男が女のカラダの下から下半身を抜く。
 後ろから女の腰を掴み、男を女の亀裂に宛がう。
 『うぁあ。くる、入って来る。ああん、硬いわ。』
 男が女の長い髪を掴み束ねた髪の毛を後ろに引いた。
 女の顔が丸見えになる。
 快感に歪む顔。口からよだれを出して悦びを表している。

 (まさか。)
 
 毎日顔を合わせている妻だった。


【明日晴れるかな?】(35)

 【以前こんな事が有った。覚えているかいユリねえ。】
**************************************
【・・・・俺・・・ユリと一緒に暮らせない。】
 ユリは衝撃を受けています。恐れていたことが現実になったのです。
 自業自得とは言え、現実になると目の前が真っ暗になってしまいます。
 激しい後悔がユリに襲い掛かってきます。
 (どうしよう、どうしよう。・・・いやだ、真ちゃんゆるして、ユリを許してください。)
 【まさか・・・と、思ったよ。初めて知った時には。】
 『違うの、違うの、真ちゃん。』
 ユリの目から涙が溢れていました。
 【目の前が真っ暗になったよ・・・・どうして?どうしてなんだ。】
 ユリの目から今では大粒の涙が零れています。
 真一の言葉一つ一つがユリの心に突き刺さります。
(あぁ・・・真ちゃん・・・あなた・・・ごめんなさい。・・・・私は・・・馬鹿な女です。あの時、あなたに全部話していれば、こんな事にはならなかった・・・・あなたに知られるのが怖くて・・・汚れたユリを愛してくれないかもしれない。そう思ってしまったの。)
 【何でだよ、俺が何をした?俺はそんなに酷い事をしたのか?】
 ユリがブンブン頭を振っています。
 (そんな事無い。全部ユリが悪いの。・・・・あなた・・・真ちゃん。あなたを苦しめてしまった。・・・どう償えば許して貰えるの。許して貰うにはどうすればいいの。)
 【チクショウ!】
**************************************

 夫の回想にユリは記憶を呼び覚ましました。
 この後、常務の精液を身体が求めたのでした。

 【・・・・その少し前・・・俺は・・・遺伝子レベルで被爆した。】

 【遺伝子が損傷して、子供を作る能力を奪われた。・・・・泣いたよ。悔やんでも悔やみきれず、恨んでもどうしようもない。俺はユリに子供を授ける力を失った。】
 ユリは言葉も無く夫の告白を聞いています。
 
 【・・・・逢いに行ったよ、常務に。・・・逢って何度も何度も殴った。暫くユリの前に現れなかった事が有るだろう。・・・・出られる状態じゃ無かったからな。】

 【殴って・・・・殴って・・・殴り疲れて・・・倒れている常務に・・お願いした。】

 【俺の代わりに2人に子を授けてくれるように・・・】
  ユリは驚愕の余り声も出ません。
 
 【欲しくても俺の子はユリにあげられない。どうすればいいのか悩んだ。悩んで悩んで・・俺は・・・頭がおかしくなった。・・・俺の妻を犯した男に俺の代わりに子を生せと頼んだ。】

 【常務に心が移ってしまうかもしれない。その恐れは何時も有った。抱かれる度に気持ちが移るだろうと、覚悟もした。】

 ユリは夫の言葉に、迷い惑乱した自分の過去を思い出し、常務に心を移しそうな自分を恥じました。
 不思議と自分を騙した夫に対する怒りは湧いて来ません。
 それより、健康だった夫が・・・と思うと涙が溢れて仕方が有りません。
 夫の事を怒る事も、憎む事も、蔑む気にもなれませんでした。
 夫は気がおかしくなった。と告白しましたが、それは嘘だと感じました。
 血の涙を流し唇が破れるほど噛んで、耐えたのでしょう。

 【・・・・黙っていて済まなかった。・・・言えなかったんだ。】
 
 【憎いだろうね。】

 『ううん。・・・・恨んでなんかいない。・・・・でも・・・・悔しい。』

 『どうして言って下さらなかったの?・・・私・・あなたの妻なのに。』
 妻と言う言葉が強く発せられました。

 『・・・どんな事でも・・・二人で乗り越えられる。・・・私が言っても嘘っぽいね。クスッ。』
苦笑交じりの言葉です。

 『あなたを・・・真ちゃんに告げられず、ズルズルと関係を続けて・・・・妊娠してしまう。・・・妻失格かなぁ。・・・真ちゃんも・・・夫・・・失格よね。』

 『真ちゃんが・・・許してくれるなら・・・失格者同士・・・3人でやり直しましょう。』

 【ユリ・・・ユリ。・・・・】
 
 『でも、真ちゃんが・・・サディストだったなんて。知らなかったわ。』
 ユリはうっとりした眼で真一を見つめます。
 
 【俺もユリがあんなに早く奴に堕ちるとは思わなかったよ。正直、焦った。】
 『そんな。だって・・・わたし』
 【いいさ、俺は自分の妻だから、ずっと遠慮が有った。君を傷つけてしまうかも知れない事を恐れた。それに・・・もしユリにその気が無かったら・・・俺は軽蔑されてしまうだろ。】

 他人が聞いたらウヤムヤの内に関係が修復してしまい、可笑しいと思うに違いありません。
 しかし二人とも判っているのです。
 お互いが相手を必要としている事に、その為には敢えて少し目を瞑り、やり直して見ようと思ったのです。
 ここで壊してしまう事は簡単です。
 いつお互いの事を赦せなくなってしまうのか、罵り合い、喧嘩をして別れてしまうのか、判らない程危ういのです。
 でも、少なくても妻を想ってした事、夫を想ってしなかった事、そのどちらの想いも理解する事が出来たのです。
 頭で考える事が出来ると言う事です。
 人間、頭で判っていても、感情で判らない事が多々あります。
 好きで一緒になった男女、婚姻届によって結びつけられた絆。
 しかしそれは、紙切れでしかないのです。
 紙切れを硬い鎖に変えるのは、相手を想う強い錬金術・・・愛情です。
 ユリと真一は今、夫婦の危機によって逆にスタートラインに立ちました。
 走り続け、転んでしまうかもしれない。疲れて立ち止まってしまうかも知れない。
 長い夫婦生活には様々な道程が幾通りにも伸びています。
 この物語のユリと真一は、この道を選びました。
 別の物語のユリと真一は別の道を辿るでしょう。
 形はどうであれ、2人が歩む道に決して間違いや正解は無いのです。
 この夫婦の物語は、ここで一旦舞台から外れます。
 またいつか、その後のユリと真一を描く事が有るかもしれません。二人の明日は晴れるでしょうか?
 真由美の事が気掛かりです。
 1人良い想いをした常務の事も気になります。更にイイ女をモノにしてしまうのでしょうか?鉄槌を下されるのでしょうか?・・・・・いつかまた・・・・・
 
                               ― Fin ―


【明日晴れるかな?】(34)

 【その子は・・・俺の子だ。そうだな。】

ユリは夫の言う意味が判りまあせんでした。しかし真一はお構いなく話を続けます。

【ユリから生まれて来る子供は、書類の上では全て俺の子だよ。俺が親子関係の事実無効を訴えない限り婚姻しているのは俺とだからな。】

そこまで言われてユリにも理解出来ました。

 例え夫以外の男の子種で妊娠出産しても法的には真一の子供となるのです。

【戸籍法第49条第1項にには「出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない。となっている。同条第2項第3号には「父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍」を記さなければならない。また、民法内772条妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。第2項には婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」

【第774条から第777条まで嫡出否認に関する事が規定されている。・・・それをするかどうかは夫の権利だ。】

 夫にこのような知識が有る事にユリは驚きました。多分夫はユリの不貞に以前から気が付いていて、調べたのでしょう。
その時の夫の心中を思いユリは涙が出てしまいました。
どうして自分1人の浅はかな考えで夫を傷つけてしまったのか、後悔しても遅かったのです。
この子を堕胎して夫に全てを話す。その結果離婚されても仕方が無い。今度はそう考えてしまいました。

【ユリ・・・今良くない考えを持ったな。形が出来上がっていなくても立派な命だ。そんな事は許さない。】

 ユリの考える事は夫に見透かされていました。

『あ、あっぁ。』

ユリは言葉にならない呻き声しか出せません。
漸く絞り出すように言葉を発しました。

『どうして真ちゃん。どうして怒らないのぉ!』

真一は不思議そうに小首を傾げます。

【何を?】

ユリは真一の言葉に絶望しました。
夫の中では自分のした不貞は怒る価値も無い事だと思われているのです。

『あなたを裏切って、他の男に抱かれて、妊娠したのよ。普通の夫婦なら怒られ怒鳴られて離婚でしょう。』

【ふ〜ん。ユリはその男が好きなのか?】

夫の言う事は少しピントがズレていると感じたのですが、答えました。

『あんな人好きになるものですか。こんな事を言っても信じて貰えないでしょうけど、・・・今でも、好きなのは・・・あなたです。』

【ありがとう。それなら良いや。】

『ほ、ほ、本当にそれだけで良いの?』

悩み苦しんだ事が虚しくなるようなあっさりとした物言いです。

【ユリは身体だけその男に与えただけだろう?心はあげていない。それならまた二人でやって行けるよ。いや、3人かな?】

ユリは夫が怒りの余りおかしくなってしまったのだと思いました。どう考えてもこれだけで済む筈が無いと思っています。

 『真ちゃん。どうしたら許して貰えるの?』

 【許すとか許さないとか、もう関係ないよ。ユリは元気な子を産む。俺は二人の為に頑張る。今はそれだけだろう。その後は二人で子育てする。】

『それでは真ちゃんだけが辛い思いをしている事になる。私を罰してくれないと気が済みません。』

 【そうか・・・・じゃぁ・・・今直ぐ俺の前で全裸になって・・】

 真一がさりげない調子で言います。
 ユリは一瞬だけ躊躇いましたが、言う通り抗う事をしないで服を脱いで行きました。
 ブラとショーツだけは恥ずかしいのか後ろを向いて裸になります。

 【こっちを向いて。
 この言葉には流石に数十秒の躊躇いが生じました。
 暫くしておずおずといった様子で股間に手を置き隠すようにして前を向きました。

【その手をどけて。】

 陰毛が薄らと疎らに生えた股間が現れました。
 常務に剃られ手から以前の翳りを取り戻してはいなかったのです。
 真一は無言でユリの股間を見詰めています。真一の記憶と佇まいが違う事は明らかです。

 『うぅ・・』

 小さくユリが呻きます。
 不倫を告白したものの、その具体的な証拠を初めて夫の目前に晒したのです。

 【なんとまぁ。こんな事もしていたんだ。】

 ユリの身体がビクっと慄きます。

 【これじゃぁ、ユリのオマ○コが見えてしまうね。恥ずかしくないの?】

 夫の言葉に股間を隠そうとするユリです。

 【ダメだよ。そのまま動かないで。】

 夫の言葉にそれ以上手が動かせなくなってしまうユリです。

 【前からなのに、オマ○コからビラビラした肉襞が見えるよ。】

 『あぁ、ゴメンなさい。許して。』

 【おや?乳房に手型が残っている。】

 ユリは慌てて胸を隠します。

 【サイズアップは妊娠したからでは無いようだね?】

 ユリの手を払い除けながらむんずと掴み右に捻ります。

 『ヒッ、痛い。』

 またしてもユリの知らない真一の振る舞いです。
 掴んだ手を離すと、手を振り上げ乳首を平手で霞めるように叩きます。

 『ぅう・・・』

 痛みの残る乳首に真一は舌を這わせます。
 叩いた時とは打って変わって優しい舌使いです。
 乳輪をゆっくり時計回りになぞります。
舌先の微妙なバイブレーションがユリの乳房を揺さぶります。

 『うぁあ。』

 常務に開発されたユリの性感は自身の身体を裏切って感じ始めています。
 追い打ちを掛けるように、真一は乳首を啄ばみます。


【明日晴れるかな?】(33)

  【その椅子に座って。】

 【で、俺に何か言う事は?】
 
 【黙ってないで、何か言いなよ。】

 夫のひと言一言がユリを追い詰めて行きます。
 今では夫に大方知られてしまっていると、ユリは覚悟していましたが、その夫が核心をはぐらかしているのです。
 それに耐えじっと俯いたまま、身動ぎもしません。ただ俯いて泣くだけです。
 
 【何時からだ?】
 ここで初めてユリが口を開きました。
 
 『お願いです・・・・離婚して下さい。あなたをずっと裏切っていました。こんな私を離縁して下さい。』

 ユリは心の中で血を吐きながら夫に言いました。
 【俺は、何時からだ。と聞いたんだ。】

 ユリの気持ちを忖度せずに真一は再度聞きます。
 ユリは一層惨めな気分です。
 妻が不倫をしていたのに、夫は怒りもせず、切っ掛けを聞こうとするのです。
 自分は、その程度の妻だったのか・・・
 仕出かした事を棚に上げ、ユリは夫に怒りと自分に対する哀れさを感じてしまいます。
 
 『異動して少し経ってからです。』
 それでもユリは答えました。
 
 【離婚してどうする、一緒になるのか?】
 『いいえ、一緒になんかなりません。』
 【どうしてだ?好きだから、ずっと俺に隠して関係を続けていたのだろう?】
 夫は、誤解しています。ユリが好きで常務と関係していたと思っています。
 『違います。あんな人好きでは有りません。誰があんな・・・・人でなしを・・・』

 真一は小首をかしげて、違う質問をします。
 【好きでもないのに、抱かれていたのか?・・・・ユリねえは、セックス好きの淫乱妻だったと言うのか?】
 
 夫にそれを言われると思いましたが、いざ言われると凄く惨めです。
 『違います。違うんです。』
 【何が違う?俺を裏切り、今年の初めからずっと、アイツに抱かれていた。その手で食事を作り、その顔で俺に笑い掛ける。よくそんな事が出来るな。!】
 
 ユリは反論できません。事実常務に抱かれた直ぐ後に、夫の食事を作り、夫の他愛のない冗談に笑う、そんな生活でした。
 どれ程辛かったか、どれ程罪悪感に押し潰されそうになったか。どれ程泣いたか。今となっては、言っても先の無い事です。
 夫を騙していたと言う、事実だけがユリの前に有るだけです。
 自分が真一をどれ程愛しているか、その生活を守りたかったか、言っても意味の無い事でした。
 初めに凌辱された時に、夫に相談するべきでした。
 相談出来なくても警察に行くべきでした。
 世間に知られたくない。まして愛する夫にだけは言えない。
 そう思った事が、ボタンの掛け違いでした。
 あとは良いように常務に翻弄され、彼の女になってしまったのです。
 この事について、夫に言い訳を言えません。
 嫌なのに、身体を重ねる度に常務に馴らされてしまう。
 ユリは女のカラダの哀しい性に啼きました。
 物語に中だけの虚構だと、想っていたのに自分に降り懸かって初めて自分の身体を疎ましく思いました。
 汚れた指で夫に触れ、夫にキスする自分。
 汚れた指で、夫の食事を作り、夫の汚れものを洗濯して綺麗にする。
 普通の主婦が当たり前のようにする事が、1つ1つ夫を汚していたのです。
  
 【その子は・・・・だれの子だ。】

 決定的な一言です。
 これに答えれば、真一はもう手の届かない所へ言ってしまうでしょう。
 答えなければなりません。

 『・・・・あ・・・あの・・・。』

 しかしユリの口から直ぐには言葉が出ません。




続きを読む

【明日晴れるかな?】(32)

 全裸で、居間の床に横たわっていたユリでした。
 ユリの股間は白濁液で汚れています。
 ユリは疲れ果てクタクタになった上体を起こして、夫の真一の姿を確かめます。
 『よかった。・・・あなた、ゴメンなさい。』
 夫は眠っています。ユリは安堵のため息を吐きました。

 【ユリ。・・・】

 ユリはハッと顔を上げました。真っ青な顔です。
 そこには、薄らと目を開けて横たわる夫がいました。
 哀しみの色が浮かぶ目でした。

 『ひぃぃ・・・あなた・・・。』
 それきりユリは絶句してしまいます。
 
 次にユリが気付いたのは、寝室のベッドの上でした。
 きちんとパジャマを着せられ、寝かされています。
 (・・・・?・・・真ちゃん?・・・あぁ、どうしよう。・・・)

 ユリは、パニックに襲われました。
 服を着せて、ベッドへ寝かせてくれたのは夫に違いありません。
 あのような格好で床に寝ていたのを、完全に知られた訳です。
 常務の精液をオマ○コから垂れ流して伸びていたのです。どのような言い訳も効きません。
 当然横を確かめますが、夫の姿は有りません。
 いえ、温もりどころか、シーツの皺も無いのです。

 (・・・何処。真ちゃん。・・・・居なくなってしまった?・・・・うぅ・あぁぁ・・)

 真一は出て行ってしまったのでしょう。
 妻の裏切りに耐えられる筈が有りません。怒りよりも絶望が夫を、この家から去らせたのでしょうか。

 ガサッ!

 台所で物音がしました。
 ユリは飛び起きて、ドアに駆け寄ります。
 ドアを開けた途端に、良い匂いがユリの鼻腔をくすぐりました。
 コーヒーの馥郁たる匂いです。
 夫が淹れるコーヒーの芳しい匂いです。専用のパーコレーターで淹れます。
 ドリップ式やサイフォン式では無く、粗野な方式です。
 浅炒りの豆で粗く挽いて、パーコレーターに入れ、火に掛けます。
 コーヒーの品種には拘らず、飲みたいモノを飲む。

 夫が良く言っていました。

 【産地や品種、淹れ方に拘るのは女だね。コーヒーが日本で普及したのは、アメリカ人のせいだよ。そのアメリカで普及したのは、西部開拓時代に、野外露営で硬水を飲み易くするためだ。コーヒー豆をフライパンで煎って砕いたモノをビリーにぶち込んだ。飲む時には首に巻いたバンダナで濾して飲む。その程度の飲み物だよ。】

 【そんな粗野な作り方をする飲み物に、産地がどうの、品種がどうの、言っても意味無いだろう?アラビアでも砂糖をぶち込んで甘くするコーヒーだよ。コーヒーの味なんて関係無いじゃないか。俺はね、コーヒーだけは蘊蓄を気にせず、好きな時に好きなように、好きな方法で淹れ呑む。】
  
 勢いで飛び出して来ましたが、いざ台所のドアに手を掛けると、躊躇してしまいます。
 どんな貌で夫に会えば良いのか。どんな言葉を掛ければ良いのか?途方に暮れました。

 涙を溢しながらユリはそっとドアの前から踵を返します。
 夫に逢う資格を己の罪で無くしてしまった。
 一時の快楽で我を忘れて狂ってしまった。
 そして取り返しのつかない事を・・・お腹の子には罪は無いけれど・・・
 
 お腹の子の事を想うと死ぬ事は選択出来ません。
 夫の前から消えるしか残されていない。そうユリは覚悟しました。
 祝福されない子・・・・この子と2人で生きて行こう。
 この子を見る度に夫を裏切った自分を責め続ける事でしょう。
 しかし、ユリには堕胎は絶対考えられません。
 まだ人間らしい形さえ成していない我が子。それでも、母性の芽はユリに湧いています。

 廊下にユリの流した涙が点々と続いています。
 さして広くない我が家、その廊下を身の回りの品を詰めたバッグ一つ持ったユリが歩いています。
 
 【ユリ。】
 玄関で呼び止められました。
 真一です。
 ユリは振り返る事も出来ずに、身を竦ませました。
 
 【何している、こっちに来なさい。】

 普段の夫からは言われた事の無い強い口調です。
 ユリは抗いようもなく、夫のいる台所へ入って行きました。


【明日晴れるかな?】(31)

 『あぁ、ゆるして・・・夫の前では・・・許して下さい。』

 ユリは力なく厭々と頭を振っています。
 常務はユリの頭を掴み、真一の前に引きずって行きました。
 引きずられたユリは両足を投げ出し、両手で体を支えて夫に接触するのを防ごうとしています。が、真一の頭の上に覆い被さる格好になっています。
 ユリの乳房が真一の顔に触れるか触れないかのギリギリの状態で耐えていますが、常務は苦しげに喘ぐ、ユリの頤を片手で上げさせました。
 その体勢のままユリの鼻先にチ○ポを突きつけた常務は、。亀頭の先の先走りの液を擦り付けて顔を汚します。
 さらに恥辱を与えるために、柔らかい唇の感触を愉しんだ後は、鼻の穴、瞼、耳の穴へと亀頭を動かしありとあらゆる穴を汚し捲くりました。
 今まで常務から、この様な仕打ちを受けた事のないユリは、目に涙を浮かべ屈辱に顔を歪ませています。
 歪んだユリの頬は真っ赤に染まり、単純な嫌悪感ではない何か別の感情を持っているようでした。
 何度も馴れ親しんだ常務の性器では有りましたが、夫の顔の上で汚される事に、ユリは異常な興奮を覚えてしまいました。
 屈辱的で背徳的な状況はユリの脳髄を焼き、白く染め上げていきます。
 常務が亀頭の先で強く押すと、ユリは自然と小さく口を開き、更に常務が押し込むと口いっぱいに常務の性器を受け入れてしまいました。
 受け入れてしまうと、ユリは躊躇いを捨て、舌をチ○ポに絡めて啜ります。
 深く銜え、吐き出し、茎胴を舌先でチロチロ舐め回し横銜えしている姿は、夫の目の前で他人棒を銜える人妻の姿とは思えません。
 とても卑猥な姿です。
 ユリの流した涎は真一の胸元に垂れて、ベタベタに汚しているのです。
 暫くそのままにさせていた常務は、ユリの頭をまた押さえました。
 『あん・・』
 ユリは上目遣いで常務を見上げました。なぜ止めさせるのか、ユリの目はそう言いたげでした。
 常務は身振りでユリのカラダを入れ替えを指示しました。
 ユリはいそいそと、夫の顔を跨ぐように尻を常務に向けます。
 眠っている夫が目を覚ましたら、目の前にパックリと肉の襞を開いた妻のオマ○コが見えたはずです。
 その先端には豆のように膨らんだクリトリスが顔を出し、涎を吹き零す膣口も暗い穴奥を見せています。
 
 ユリの腰をガッシリ掴んだ常務は、亀頭をユリの膣口に嵌め込むと、肉が練れて来るまでじっとしていました。
 焦れてきたユリは後を振り向き、切ない顔を常務に向けます。
 素知らぬ顔の常務に、またしても焦燥感を煽られて、声に出して求めてしまいました。

 『おねがい、欲しいの。早くください。焦らさないで。』

 この頃では、声に出して言う事で一層感じてしまう事をユリは自覚しています。
 常務の言葉嬲りで感じてしまう女にされている。
 そう思うだけでも、より快感を味わう事が出来る。そんな女になってしまっているのです。

 【ユリはイヤラシイ体をしているな。チ○ポを銜えて離さない。】

 常務のこんな言葉でも感じてしまいます。

 【出産したら、ユリのオマ○コの改造手術をしよう。小陰唇の縮小手術だ。この頃ビラビラが肥大して大陰唇からはみ出しているからな。ユリも恥ずかしいだろう。】

 『そんな・・・言わないでください。』

 【旦那も本当は、気が付いているんじゃないか。ユリのオマ○コが変わってしまっている事を。】

 『うそよ、そんな事。』

 でも、ユリも内心気にしているのです。
 1人でお風呂に入った時に自分の身体を点検する習慣が身に付いているのです。
 処女の頃はそれ程気にした事は無かったのですが、男性に抱かれるようになって、気になりだしたのです。
 色・形・体臭等、気にしだすと悩む事が色々出て来るのです。
 自分のあそこは、男性にどう見られているのか? 
 他の女性と比べられているのではないか? 
 変じゃないのか?
 匂ったりしていないか?
 女性は特に気にするものです。
 ユリも同じでした。
 真一と結婚してからは多少疎かになっていたかもしれません。
 嫌われるリスクが夫婦には小さいからです。
 結婚はユリに安定をもたらしましたが、その反対に女としての緊張を奪ってしまったのです。
 恋人時代は、常に彼に気に入られようと、努力を重ねています、しかし、1度婚姻届を提出しますと、その地位は結構強固なものとなるのです。
 ユリが一気に女を失わなかったのは、結婚後も働いていた事と、子供がいなかったからです。
 しかし、今回はそのユリの女が、常務を招き寄せてしまったのです。
 ユリはその気が無かったのに、無理やり常務に女に戻されてしまったのです。
 常務に女の身体を開発されて、自分の奥に潜んでいた性に気付かされ、性の悦びを知りました。
 夫に申し訳ないと想いつつ抱かれる事に溺れたのです。
 そして・・・鏡の中のユリの身体は変っていました。
 記憶の中の自分の身体より丸みを帯び硬さの取れている肉体。
 男好きと言うのだろうか、しっとりとした肌・・・吸い付く様な肌に代わっていました。

 『ひぃぃ・・・嘘よ、うそ。』

 ユリが見たモノは、自分の股間からはみ出して見える紅い肉襞でした。
 慎ましやかな佇まいが、卑猥な身体に代わっていたのです。
 これでは夫にばれるのは時間の問題です。
 この日以来、夫の求めに何かしらの理由を付けて拒みました。
 しかし、夫の事を嫌いになった訳では有りません。こんな、身体になってしまった自分を許して欲しいのです。
 暗がりでなら真一に抱いて貰えます。暫くしてから、数度己のカラダの変化を隠して夫と抱かれました。
 その夜はユリの心にかってない温もりをもたらしたのです。
 朝になると消えてしまう幸せでした。
 常務の女に代わる時間帯です。己の肉体に心が負けてしまう時間です。
 銀行へ足を踏み入れると自然と淫靡な気持ちが湧き起こり、夫の事が頭から拭い去られてしまうのです。
 
 そして、思い知らされました。
 夫の事を忘れた振りをしている自分に。無理やり心を閉ざした自分の哀しみに。
 変ってしまった自分のカラダに、それが表れていたのです。
 己の罪深さをユリは、常務に自覚させられました。絶望がユリを襲っています。


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プロフィール

HIRO(S)

Author:HIRO(S)
HN:HIRO(S)
年齢:秘密
性別:秘密
地域:関東地方
動機:gooで削除されたので。
一応フィクションとしてますが、ナイショ
写真は・・・・いけないんだぁ

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