【ドルチェ・アマービレ】(36)

 【ホワイトアスパラガスとキャッツアイオイスター、黒トリュフのサバイヨン添え。】

 【メインはシャラン産鴨のフィレ肉のロースト、ブラッドオレンジソース。】

 【デザートは好きなっものを選んで下さい。】

 ここは横浜中央区日本大通りにある『アルテリーベ』ミュージックレストラン。
 教授がネットで予約したお店だ。
 場所は、みなとみらい線日本大通り駅を出てすぐ、神奈川県庁、中華街も横浜スタジアムがすぐ傍だった。
 何より、クラッシックの生演奏を聴きながら食事が出来た。

 【超高級店では有りませんが、良い雰囲気でしょう?】
 今夜のコースは約13,000円のコースだった。ネットで調べたんだけど、教授は2番目に高いコースを選択した。だって、1番高いの1万7千円位するもの、学生には贅沢すぎる。

 でも教授は前にも横浜に連れて来てくれたけど横浜が好きなのかしら?
 『教授は横浜が好きなんですか?良くいらして居るの?』
 【好き?と聞かれれば好きでしょうね。】
 何か物思いに耽っているのだろうか?返答が短い。
 『もしかして、恋人と来たのですか?』
 【・・・・元、ですけどね。昔の事です。】
 教授はワインを一口飲み、話を続けた。
 【綾歌君は私の若い頃の思い出話等聞いても面白くないでしょう。それに・・亡き妻との思い出ですから、余り気分の良いものではないですよ。】
 三船さんが話してくれた奥様の事を、私の前で初めて口にした。
 『いいえ教授。私奥様の事もお聞きしたい。教授のお若い頃のお話も聞きたいです。』
 ワインの酔いに任せて言ってみた。

 【実は・・・妻と知り合ったころ1度だけ横浜に車でデートをしに来た事が有ります。ベイブリッジを渡り、停めた駐車場が山下公園でした。】

 【目の前に観覧車がイルミネーションを輝かせて動いていました。カップルが多くて自然と手を繋いで歩く事が出来ました。周りを窺うとkissしているカップルが・・・これはチャンスだと思いましたね。無数のカップルの甘い雰囲気に充てられて、私達も・・】
 お酒のせいではないだろう?教授の顔が赤い。

 【夜の海に映る観覧車がゆらゆら揺れていてとてもロマンチックな雰囲気でした。が、お腹は正直です。ググゥ、と妻のお腹が鳴って私は思わず噴き出してしまい、ポカリと頭を叩かれました。】

 【中華街に行こうとしたら、8時頃なのにもう殆ど閉まっていて、仕方が無いので別の場所を、そこら中探してやっと見つけたお店で食べたのが、カレーライスでした。】

 【妻は・・・文句ひとつ言わずに、美味しいね、またここで食べようねと、言ってくれました。帰りの車の中で、ベイブリッジで写真を撮りたいと言い出したので、同じように車を止めていた列に習い、写真を何枚も撮りました。高速道路ですから駐停車禁止なのですが、橋のアナウンスを無視して撮って帰りました。・・・詰らない話でしょう?まるで初心な高校生みたいな話ですからね。】
 教授は自分でも可笑しかったのか、クスクス笑っている。
 『教授にも純なお年頃が有ったのですね。・・・良いなぁ、私も同じように恋人とデートしたいなぁ。』
 【夜の山下公園を散歩してみますか?・・・私と。】
 今日のご褒美ですよね教授?


【疑惑のテンポラリーファイル】(16)

 【そんなバカな!・・・みゆきと・・・高校生の時に初体験?・・バカな・・妻とは、結婚が決まってから結ばれた・・・あの時・・・ちゃんと証も・・・そんな・・。】

 年齢退行催眠の初回の報告にひろしを呼び出したマサミは、意外な答えに愕然とした。
 「そんな・・・相手はひろくんと、仰ったのですよ。ご主人の事ですよね。」
 【確かにあの当時から子供が生まれるまでは、ひろくん、と、呼ばれていました。でも、結婚するまで・・幾ら求めても・・許してはもらえなかった・・・。】

 マサミの顔が蒼白になる。自分の診断に重大なミスが有ったとしか言えないからだ。あの時、呼び名が「ひろくん」と言う事で、てっきりご主人に違いないと思い込んでしまい、きちんと聞き取りしなかったからだ。
 【妻は・・・みゆきは・・・最初から俺を・・・騙していたのか?】
 「ご主人・・結論を急ぐのは早計です。・・・記憶が錯綜したのかも知れません。もう少し深く、慎重に事を進めますから。」
 【先生・・・疑惑が本当なのか?真相を知る為なら・・・】

 「ご主人・・・ひろしさん。これからお話しすることはあくまでも可能性の段階です。決して診断の結果に基づいたものではありません。」
 マサミが自分自身持ち得た疑問をひろしに告げ始めた。
 本来なら家族に話す段階ではないが、大事故の後でもあり、ご主人の理解が得られないと今後の治療に障害が発生しかねないと言う理由を付けた上で話し始める。

 「まだ、年齢退行睡眠を1度行ったばかりですし、私もみゆきさんの信頼を勝ち得ていると判断出来ない段階ですが、今私の中で有る1つの仮説が生まれています。その仮説に従うなら、ご主人が持たれている疑惑・・・その疑惑の原因を説明出来るかも知れません。しかし、あくまでも仮説です。間違いの可能性も大きいので、参考程度に聞いて下さい。」
 マサミの説明は歯切れが悪い。ひろしはその歯切れの悪さを逆に信頼すべき内容だと思った。
 
 「ここに、DMS―Ⅳと言う医学書が有ります。私が診断の時に利用する基準です。このマニュアル・・・・The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders略してDMSと言うのですが、これはアメリカ精神医学会で定義している精神疾患の分類と診断のマニュアルです。Ⅳは改定された第4回目と言う意味です。」
 マサミの説明が続く。

 「1994年に改定されたDMS第4版、この最新版がDSM-Ⅳ―TR【2000年】です。これにも名称が改正されたものが載っています。例えばDissociative Identity Disorder・・・日本語に訳すと解離性同一性障害がそれですが、元の名称をMultiple Personality Disorder・・・・・多分ご存じだと思いますが・・・多重人格障害と言いました。」

 【もしかして先生・・・みゆきは・・・その・・多重人格・・・だと?】

 「そう言い切るだけの判断材料が有りませんので、今はただの仮説です。しかし、ご主人の話を伺って、退行睡眠の時のみゆきさんとご主人の話の中のみゆきさんを無理なく1人の人格に考えると導き出される答えがこれです。」

 「あの催眠の時のみゆきさんは私から見ても、心底嬉しそうに見えました。」
 マサミが言う。

 【良く分からないのですが、小説や映画などのストーリーの中の多重人格者は、例えばジギル博士とハイド氏や超人ハルクなんて言うアメリカTVドラマでも薬物で人格や体形が変わる話が有りますよね。みゆきも何か薬物で?】
 
 「解離とは・・・1人の人間が連続して持っているべき、記憶や意識や知覚が、上手く統一されていない状態の事を指します。」

 「同一性とは・・・人は成長するに従って1つの確固たる人格とそれに対応した記憶がそれぞれ形成されるのですが、それは、時間・場所に関係なく変化しないのですが、自分のカラダ・記憶は自分だけのものであり、いつどこに居ようと変化しない。これを自我同一性と言うのですが・・・」

 「薬物で引き起こされる事を精神疾患とは言いません。そして解離症状は女性の割合が高く、成人女性は成人男性に比べて3~9倍の頻度で診断されます。」

 マサミの説明だと、解離症状が進むと別人格になりお互いの存在を認識せずに居ると言う事だった。
 この症例は昔はアメリカだけの文化依存症候群等とみなされたこともあったようだが、今ではWHOのCD-10、DMSの国際版とも言うべきマニュアルにも記載されている。

 【私には・・・いえ・・ネットで調べてみます。それから出来ましたら逐一治療の、その、あの・・・話した内容を教えて頂きたいのですが・・・】
 「お辛い結果になるかもしれません。よした方が・・。」
 【いえ、どうしても知りたいのです。】
 「解りました」
 やっぱり聞かない方が良いのか?ふと弱気になりましたが、先生には告げませんでした。


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