4月30日(金)
目の前に、ボロ雑巾のようになった田中と、顔が腫れ髪の毛はボサボサ、目を真っ赤に晴らした女性、その女性を睨み付けている男の3人組がソファーに座っていた。
「私が、今日玲子さんに頼まれ、話し合いの立会人をすることになりました。田中さんとは面識がありますが、お二人とは初めてですので、私の立場を一応説明します。」
一旦言葉を切り、窺いますと一人だけ杉本さんのご主人だと思う人物が頷きましたので、先を続け。
「実は、先だって私の陶芸作品を、ここに居る玲子さんが誤って壊したため、その賠償に家事一般のお手伝いをして貰っているのです。その際、こちらの旦那さんも交えて話をしましたので面識が有るのです。・・・賠償の家事については旦那さんからの提案でした。」
【なるほど、そうでしたか。・・・田中は自由に時間を作るために玲子さんの瑕疵を利用したのでしょう。昨日現場に踏み込んだのは匿名の手紙を受け取ったからです。もしかしてそれはあなたですか?】
「いいえ違います。誰か知りませんが私じゃありません。」
【・・・そうですか。それじゃあ、ここから先は私が話してもよろしいですね。】
うなづきを見て杉本が話し始めた。
【奥さん、昨日電話でも話した通り、こいつら私の家でセックスしていたんですよ、何時からか?何にも判らないので、あなたを交えて聞き出し、今後どうするか決めたいのです。】
杉本は内心の怒りを抑え、話し出しました。
『本当に済みません。主人がとんだことを・・・』
【いえ、あなたが謝ることはありません。こいつらがやった事、同罪ですよ。お前ら謝りもせず・・】
杉本が言うと、慌てて綾子が謝る。
【あなた、ごめんなさい、もう二度としません。許して下さい。】
「ご主人、申し訳ありません。」
【お前が謝るのは俺だけじゃないだろうが・・奥さんに謝ってないじゃないか!】
「れ、玲子すまん。もうしないから許してくれ。」
【ったく・・・謝るくらいなら最初からするな!・・・こういう結果になるのは判り切ったことだろう・・・それともバレなければ続けるつもりだったと言うのか。】
綾子も田中も黙ったまま下を向いています。
【・・何時からなんだ?答える綾子。】
【・・・半年前です。】
【切っ掛けは?どちらが誘った?】
「・・・私です。・・・会社の社員旅行に行った時に・・・プランナーと顧客という立場で打ち合わせを繰り返すうちに・・・」
【社員旅行?何月だ。打ち合わせは何時から?】
「10月に行いました。打ち合わせは4月ごろだと思います。」
【10月か・・・社員旅行の時に関係が出来たんだな。】
『いいえ、旅行の時では有りません。旅行終了後に色々世話になったから、食事でも、と、誘われました。その時お酒を飲んで・・・飲みすぎて気分が悪くなって・・・休んでいこうとしたら、その時間にあいている所もなくて、ついラブホテルに入って休んで行こうってなって・・・ごめんなさい。抱かれるつもりなんて、少しも思ってなかったので、それなのに・・・』
【気分が悪ければ直ぐにタクシーでも乗って真っ直ぐ家に帰れば良いだろうが、家が隣同士だから同乗して帰って来るのが普通だろう。】
『ごめんなさい。そうでした、そうすべきでした。』
【田中、お前は最初からその積もりで誘ったんだな。】
「はい、その積りでした。すみません、最初から奥さんとどうにかなりたいと・・・思っていました。だから旅行も頼んだのです。」
【まんまとその誘いに引っ掛かったわけだ、この淫乱女は!】
黙って話を聞いていた玲子が口を挟みます。
『どうして、綾子さんを・・・誘おうと思ったの?・・・私に不満があったの?』
田中は開き直ったように玲子に答えます。
「・・お前とのセックスに不満があって・・・ほかの女性とセックスしたかった。日頃から気になっていた綾子さんに近づくチャンスがあったので・・立場を利用した。」
どうやら、田中はもう離婚を覚悟したのか取り繕うともしません。
綾子のほうはそんな田中が何を言うのか、戦々恐々としながら話を聞いています。彼女は離婚の覚悟があるようには見受けられなかった。
回想録 ~二人の玲子~ 27<PageTop
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