翌日から私の行動がおかしくなった。
妻が外出するたびに跡を付けるようになった。幼稚園への送り迎え。スーパーへの買い物、そして役員会。
その日は夕方から会合があるという。娘の面倒を頼まれた。
急いで知り合いの女性記者に娘を頼みこみ、園に向かった。
しかし、幼稚園の門は閉まっており、既に人の気配は消えていた。
途方に暮れ、辺りを車で徘徊する。
この町にはラブホテルは無い、隣の市だろうか?それともその先の市・・・夜10時を過ぎてもまだ見つからない。
確か歓楽マップがアトリエのほうにあったことを思い出した。男性記者が置いていったものだ。
ホテルの場所を確認するため戻った。
自宅とは離れた場所にアトリエを設けていた。日常と非日常を区別したかったからだ。
アトリエに電気がついている。 侵入者か?
表からだと拙い。非常階段を静かに登り2階から入る。
屋根裏部屋のような作りにしてあるその部屋は、描き終わった絵の保管場所のほかに、一部倉庫にしていた。
そこから壊れたイーゼルの1本脚を拾うと、階下へ降りて行く。
アトリエと台所、仮眠室と保管庫、どこだろう。
明かりはアトリエについていたがそこには人影が無かった。
仮眠室に向かう、そこから出てくる人影が見えた。
とっさに持っていたイーゼルでなぎ払う。
ギャァ・・・くもぐった悲鳴と共に倒れる音が響く。
『いや・・・戻ってこないで・・』
部屋の中から女の声がした。
廊下に出てくる。
明かりをつけた、
裸の女が立ち竦んでいた。
『あっ・・・あ、あなた!・・・』
絶句して動かない妻から目を逸らし、倒れた者を見る。
見覚えのある男だった。幼稚園の園長・・・私より10歳は年上の男だった。
『あ、あなた違うの・・・違うの・・・』
私は返事も出来ず、あまりのショックに、その場を立ち去ろうとした。
その時妻が必死に私の足にしがみ付く。
『ちがうの・・・ちがうの・・・あなた・・』
大きな声で泣き出し、頭を左右に振って何かを否定する。
『・・・』
少し経って落ち着いた妻の話は、この男に脅され無理やり関係した。今日が3回目だと言う。
謝恩会用に集めたお金を紛失してしまい、穴埋めに持って行ったお金を、盗んだお金だと言い張られ、デジカメ写真を取られた。抗議しても聞き入れず、この写真をばら撒くと言われ、仕方なく酒を一緒に飲むことを約束されられた。
当日1杯しか飲まなかったのに、急に眠気が襲い、気が付いたらホテルで犯されていた。
今度はその写真を夫に見せると脅され、はしたない下着を渡され、呼び出したら之を穿いてくるよう強要され、また犯された。
そして今日、無理やり夫の仕事場で辱めを受け、汚されたと告白した。
「警察に行こう。之は犯罪だ。」
『でも・・あなた。ご近所が・・』
「何を言っている、二度とこんなことが起きないようにするんだ。お前も可哀そうだがそれでも赦しておけない。我慢してくれ・」
『・・・・はい・・』
翌日園長は逮捕され、婦女暴行、脅迫の罪で起訴された。
裁判ではあっさり罪を認め結審した。
だが、やはり近所に噂が広がり私達は引っ越さざるを得なかった。
夫婦の間でも、ギクシャクしてしまっていた。
へ~こんな事が現実に起こるとは・・・個人的<PageTop
>回想録 ~二人の玲子~ 30
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