食事が終わったところだから、言われたとおり帰ることにし、10階の部屋にもどった。
シャワーを浴び、ビールを1缶飲んだ時、チャイムが鳴る。
ドアを開けると香織が立っていた。
『中に入れて。』
廊下で立ち話をする訳にも行かないので、黙って隙間を空けた。
無言でリビングに入っていく香織。
玄関の靴を揃えてから部屋に入っていった。
香織がぶつかるように抱きついてきた。
両手で拳を作り、私の胸を何度も叩く。
決して強くは無い、ただ無言で叩く。
もうそろそろいいかな?と思った私は香織の両手を手に取り止めた。
『ばか、ばか,馬鹿。・・・どうして怒らないの?・・憎まれ口きいた香織を叱らないの?私に飽きたの?嫌いになったの?』
頭を私の胸に預けて泣いている。
裸の胸に涙が伝う。
『解っているのよ。こんなこと続けられないのは。でも、ダメなの。毎日きょうは止めよう、今日こそは止めよう。そう思うのに、あなたの事を想うと苦しくなるの。』
『夫の事は愛しているわ。でも、あなたの事も愛してしまった。身体が疼くのも本当のことなの。遠くの夫より近くのあなた。抱いて欲しいのはあなたなの、健一じゃないの。
このままじゃ、心と身体がバラバラになる。・・・ねえ、あなた・・・強く抱きしめて。抱きしめてくれるだけで良いの。』
抱き寄せるとギュッとしがみ付く。迷子にならないように必死で縋る幼子のように。
『ねえ、あなた私を滅茶苦茶にして。あなたを嫌いになるほど、私を堕として。』
香織に全裸になるよう命令し玄関先に連れて行った。
『こんな所で・・はい、脱ぎます。』
全裸になった香織に囁いた。
「外で5分そのままで居るんだ。」
『な、出来ません。誰かに見られる。』
「堕ちたいんだろう。露出狂の噂を立てられる様に協力してやるんだ、嬉しいだろう。」
『そんな・・・唐突過ぎだわ。出来ません』
私は香織の脱いだ服を手に取り、玄関の靴入れから、荷解き用に置いておいたカッターナイフで引き裂き始めた。
『やめて!ひどい!』
「ほら、これで自分の部屋に帰るのも裸で行くしかない。覚悟を決めろ。」
無理やり、香織をドアから押し出し、鍵を閉めてしまった。
ドアを叩く音がするが、大きな音はさせてない。
隣に聞かれたら・・恐怖の方が大きいのだろう私にだけ聞こえるようにしていた。
のぞき窓から見ると、香織の顔は蒼ざめ恐怖に引き攣っていた。
廊下の外から覘かれないように中腰で、キョロキョロ辺りを見廻す。
1分・・・2分。と、エレベーターの表示がのぞき窓から見える。上昇を示している。
香織も気がついたのか、眼を大きく開け表示を見ている。
5階を通り過ぎ7階で止まった。
ホッと息を吐く香織、途中で息が止まった。
表示は更に8階を示している。後2階分だ。
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