【ドルチェ・アマービレ】(2)

 「あやか~!こっち、こっち!」
 「お久!あやか」
 『エリ、エッちゃん。久しぶり~』
 こっちに来ている、高校時代の友達と数ヶ月ぶりに居酒屋で会った。
 大学に入った頃は3人でよく遊び歩いたが、この所私が忙しくて仲間から外れる事が殆どで、エリが短大を卒業する為、そのお祝いをしようと待ち合わせをしたのだった。
 エリは卒業後地元に帰ると言う。春から念願の幼稚園の先生になる。
 エッちゃんは美容師専門学校を出て、見習いとして働く。2人ともそれぞれ夢に向かって歩き始める。
 なのに・・
 「遅いよぉ、あやかぁ。またバイト?」
 『うん、ごめんね。でも今夜中途で休んだわ。』
 個人レッスンの費用も馬鹿にならない。授業だけではオーディションに受からない。
 毎年行われる秋の定期演奏会が当面の目標だが、今の夢は卒業演奏会に出演する事。その先は・・・な~んも考えられねぇ・・今のキタジマ?
 音大に入学するまで、一通りやってきた積もりだった。
 それが・・みんなとのレベルの違いにやけを起こしかけ、エリたちと遊び歩いた。
 その私を叱りつけ、宥め空かし、何とか3年に進級させてくれたのは、シュトレーゼマン(渾名です。)のお陰だ。
 そのシュトレーゼマンの個人レッスン費用を捻出する為に夜のバイトをしていた。
 「あやか・・地元に帰る前に一度レッスンを見せてくれない?だめ?」
 『エリ・・どうしたの?』
 「ウン実は・・小母さんが・・・ちゃんとやっているか見に行って欲しいって。夕べ電話して来たの。」
 『え~、お母さんが。そうかぁ、お正月も帰らなかったからなぁ。そう言う事なら仕方ないかぁ。分かったわ。教授に聞いてみる、返事はそれからでも良いでしょう。』
 「一度帰ってやれば、しなくても済むのに。」
 『だめだよ。バイト休むとレッスン料払えない。』
 「仕送りあるでしょう?」と、エッちゃんが口を挟む。
 『ダメダメ、授業料と生活費で精一杯。その他の個人レッスン代、勉強の為聞きに行くコンサート代、楽譜代まで頼めないもの。』
 騒がしくなって来た店内につい声が大きくなる。
 「そうなんだ。あとお洋服代、お化粧代、エステにネイルサロン・・クラブも最近奢ってくれるオジサン達が少ないしね。」
 『エリ・・・クラブって・・・幼稚園の先生になる人が、良いのかよ~。?』
 笑いを堪えながら聞く。
 「いいのいいの。私は食事代に飲み代、遊び代が助かる。オジサンは性欲処理に助かる.。一石二鳥って、カンジ・・」
 私とエッちゃんは身体をエリから離し指でエンガチョした。
 「冗談だって!・・乙女がそんな事をする訳無いでしょう。エッちゃんなんか、この間ヤリコンに行ったって聞いたけど、どうなの?」
 『何それ?合コンじゃないの?』
 エリが疑わしそうな目で私を見る。
 「エッチ目的の合コン」
 (うっそ~・・・初めて会った人とエッチするの?エッちゃんが?)
 エッちゃんは地元でも目立つ、美人で派手な性格をしているが、そんな子には思えなかった。
 「ちょっと、エリ。・・・ネンネのあやかになに教えているの。まだ3回しか行ってないよ。」
 (と言う事は・・・エッちゃん・・・)
 顔が赤らむ。お酒のせいではない。
 「真面目な綾歌には刺激が強いから、その話はヤメ。あやか、夜のバイト何をやっているの?」
 『え、ああ、あの・・その・・クラブで弾語り。』
 クラブ・・高級なお店だが、男の人が女の人目宛に来るお店。BGMにピアノでクラッシックを弾いているが、お客さんの要望で歌いながら弾く事もある。
 大抵はジャズナンバー。
 弾いていない時にはお酒の相手もする。チップはこの方が沢山貰える。
 でもこのバイトは内緒。弾語りは大丈夫だがお酒の相手はちょっとヤバイ。学部長や学長が許してくれても、理事達が堅物のなのだ。去年、キャバクラでバイトしていた子が定期演奏会のオーディションでバイトを理由に落ちた。と噂が流れてから、同期は皆止めた。理事は審査に関係ないと思うけど、リスクは犯せない。
  
 「んじゃ、二次会行こう、カラオケだよ。」
 カラオケは高校の時以来だから本当に久しぶり。
 「ね、あやか・・これ歌って。」
 知らない歌、最近のJ-POPなんて聞いた事が無いから、1度音だけ流してもらった。
 『じゃ歌うよ、掛けて。』
 「流石だね、一度聞いただけで歌えるなんて。」エリが感心する。
 「この子、音聞いただけで楽譜が書けるんだって。」とエッちゃん。
 そうなのだ。
 でも、これは半分当たっているけど半分間違っている。
 音を聴いて楽譜にするのは大学受験の時に有ったし、年に5、6回有る「ソルフェージュ」の試験にも出る。初めて聴いた音を楽譜に書き留めるのである。
今の様に色々な音が混じり合っている曲を楽譜に落とすのは私には、まだまだ無理だけど、カラオケなら歌える。
 二人が驚いてくれたので気分良く歌えた。
 
 【綾歌君、ちょっとアドリブで。】
 教授の指示に従い、 自由に弾く。珍しいこともあるのね。
 【で、友達に見学させたいと。】
 『はい、教授、春から幼稚園の先生になる友人なんです。』
 思い切って、相談してみた。
 【綾歌君は気が散るだろう。貴重なレッスン時間を無駄にしないように、その窓からなら許可
しよう。】
 窓とは、教授の部屋の入り口のドア。防音硝子で外から中が見えるようになっている。
 教授の部屋は防音になっているから、密室にならないように窓がちゃんとある。
 【ところで、綾歌君。ジャズは面白いのかな?】
 『え?教授・・・』
 (まずい、どうして教授が?)
 【お酒も随分強いのだね。】
 (バレてる?何で。)
 【バイトは・・したからと言って、僕がどうこう言う事ではないんだがね。止めないで、もう一度。】
 鍵盤から指を離してしまったが、また弾き始める。
 教授が椅子を私の脇に置く。
 【面白いね綾歌君、君の解釈は。どれ、僕も・・アンサンブルしよう
 教授が隣に座る。
 教授は2オクターブ上を弾く。
 【だけど、あれはまずいよ。あれは・・】
 『ヒッ。』
 教授の右手が私の左のスカートの上から内股を摩りだした。
 『教授、やめて下さい。』
 【腹の出た、禿オヤジなら、良いのかね。】
 この間の事だろうか?お酌した客が酔っていて、体を触って来た。声を上げようとしたらママに、耳打ちされた。
 『綾歌ちゃん。ごめん、我慢して、このお客さんこのビルのオーナーなの。お給料倍にするから。ね。』
 仕方がない、今月は来年度の授業料の支払いがある。そう思って我慢した。それを見られた。?
 『教授・・・教授がこんな事を・・するなんて。・・・信頼していたのに。』
 1年の時から教授に教わって来た。教授がいなければ大学も中退していたかもしれない。
 【綾歌君。・・僕は君の才能を高く評価している。だが、あれはいけない。もっともっとレッスンを重ね、声楽家として世界に羽ばたいて欲しいのに。】
 『でも、教授。・・・バイトしないと、レッスン料が払えません。あ、ヤメテ。』
 教授の指がスカートの中で太股を鍵盤に見立て、子犬のワルツを奏で始める。
 指の動きが小刻みで、巧みに動く。長くほっそりとした指が。
 なぜか、抵抗できない。教授の言葉に縛られてしまう。
 【世界】・・この言葉が私を呪縛する。
 【レッスン料の事は気にしなくても良い。綾歌君が私に付いて本気でレッスンに打ち込むなら、出世払いで良い。・・バイト止めるね?】
 (うう・・卑怯よ。と言えないのが辛い。人の弱みにつけ込んでと言いたいのに、言えない。教授の言う事も一理ある。バイトよりレッスンなのは当然。だけど・・イヤラシイ事ずっとされるの?)
 教授の指が1オクターブ下がる。先ほどとは違う箇所を刺激される。
 『あん。きょ、教授・・・イヤラシイ事しないで下さい。』
 【バッハやモーツアルトにもパトロンが居た。僕は君のパトロンになろう。君が世界に羽ばたくのが僕の悦びなんだ。これから、色々お金がかかる。レッスンもそうだが、綾歌君もイタリアに行って本場のオペラに触れたいだろう。それに・・歌劇なら演劇の素養も必要だ。悦び、哀しみが表現出来なければ。僕がその悦びと、哀しみを教える。そして僕にされる事に怒れ。・・・すべてが完成して。楽が綾歌君に訪れる。君の先輩にもこの特別レッスンを受けて成功した人がいる。】
 教授が告げた人は世界で活躍している、あの人も・・・
 『あぁ・・なれますか?私も・・教授・・あん、ああ』
 教授の指が股の付け根・・・の女を弾く。
 【なれるとも。君はこの事に流されないだろう。その時だけで、そう言う人と見込まなければ特別レッスンを申し出ない。君は性愛に流されない。どんなに淫らな事をされても可愛らしさを失わない女性だ。僕は確信している。】
 教授の言葉が耳元で囁くように語られる。その甘美な響きに酔いしれる。
 『教授・・・レッスン・・・お願いします。』
 こうしてシュトレーゼマンは私の教授でありパトロンになった。


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