【し、詩織君。やめるんだ、本当にヤメテくれ。】
詩織の手はオジサンのお尻の割れ目に差し込まれた。
(オジサンのお尻ピクピク動いて、面白い。男の人のお尻を触るのも、偶には良いなぁ。いつも触られて、ばっかりだから。)
詩織は、自分の思いに囚われて、オジサンの顔から余裕がなくなった事に気が付いていなかった。
『オジサン、気持ちいい?』
そして突然オジサンの逆襲が始まった。
ペニスを掴んでいた手を無理やり外され、頭からシャワーが掛けられた。頭を振ってもノズルが追いかけて来る。
息する暇もなく、お湯が頭から滴る。髪の毛は顔に張り付き、唇に纏わり付いて気色が悪い。
【詩織さん。君は酷い人だ。落込んでいた僕の話し相手になってくれたことは感謝している。 一人ベンチで食べるお弁当は、本当に寂しかった。】
【君が声を掛けてくれた時は、これからの事を考えていて絶望が僕を包んでいた時なんだ。】
【目の前が真っ暗で、家族の事、自分の事。色々考えていた。君はそんな僕に栄養ドリンクをくれた。どれだけ嬉しかったか。それから君とあそこで話が出来る事に喜び、毎日会いに行った、若い子の話題がどうなのか分からなかったが、自分なりに考えたり調べて答えた。】
【楽しかった、君に抱きつかれた時にドギマギして年甲斐もなくトキメいたかもしれない。】
【君が追われている姿を見て、助けたいと、それだけを思っていたよ。手を引かれて・・イケないと思いつつ部屋まで来てしまった。僕だって男だ。ここが何処だか知っている。知らない振りもワザとらしいかなと思いつつしていた。でも君はどんどん思わせぶりに僕を追い込んでくる。僕は最初に会った時と変わらない。目の前が暗く崖の上に立っているのと同じなんだ。状況は少ししか変わっていないんだ、君と話せて少しは不安を取り除いて貰っていたが、明日がどうなるか自分でも判らない。】
【その僕が君の悪戯に・・君はそんな気じゃなかったのかも知れないが、スイッチが入ってしまう。これから起こる事に君が『こんなはずじゃなかった。』と後で言われても、僕は弁解なんかしない。】
オジサンはシャワーのお湯を止めると、私の顔をじっと見つめ呟く。
【・・そうさ・・僕は・・なんだ。】
(よく聞き取れなかった。でもオジサンの苦悩は少し伝わる。オジサンは喜んでも居たが毎日不安で一杯だったんだ。余り次の日の事を考えずにいた自分と違い、オジサンは不安で不安で、自分に自信が無かった。目の前が暗くなる程の不安・・オジサンには愛する家族がいる。その家族を守りたい気持と話せない苦悩。その気持ちを紛らわせられたのは、あの場所だったのね。私と話す事がオジサンの癒しになっていた。それを・・思わせ振りな事をして、心を乱してしまったのね。きっとオジサンにはリストラ以外の別の不安もあるんだわ。リストラなら就職先を何とか探せば解決する。難しい事でも何とかなる。でもどうにもならない事も抱えているのね。・・・オジサン・・ごめんね。私・・少しオジサンをからかっていた。自分の周りにいないタイプだから・・物珍しくて。多分オジサンとは全然違う世界で生きてきた。知らない世界を垣間見る・・好奇心で話していたんだわ。自分の事ばかり考えていて、オジサンの事は心配はしていたけど、オジサンの振る舞いに幻惑されていた。そう・・なんだわ・・最初に見かけたあの体を丸めて、ため息をつきながらベンチに座っていた姿が、本当のオジサンなのね。・・・ごめんね。ごめんなさい。)
詩織は涙を流しオジサンを見つめ返す。オジサン・・本当の名前も知らないオジサン。今詩織は無性にオジサンを抱きしめたくなった。キスしたかった。オジサンの心の中を知りたくなった。オジサンの闇に迫りたかった。
それには、オジサンの元へ飛び込んで行くしかない。でも・・オジサンを好きな訳じゃない。同情でも無い。そう、やっぱり好奇心。今はそれでも良い。
『オジサン・・・抱いて。』
お詫びですぅ。<PageTop
>感想有難うございます。
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