クロウエア・エクサラダ【25】

 【許して欲しい香織。】
 意外な夫の言葉。やっぱり別れを切り出されるのだろうか?
 【ずっと、君を騙してきた。僕に君を責める資格は無い。】
 『え?あなた?』
 【知っていたんだ。一郎さんと君が関係を持った事を、最初から知っていたんだ.】
 『・・・・・・』
 香織は何も言えない。
 【知っていると言うより、僕が君とセックスするようにお願いした。】
 『どうして?なんでそんな事を?』
 【君は単身赴任先で一郎さんに再会したことを僕に黙っていただろう。?】
 『それは・・・ごめんなさい。』
 【いや、責めているのではない。次の日に早智子さんから教えて貰ったんだ。】
 香織は早智子の名を聴いて怪訝な顔をしている。
 【早智子さんは一郎さんから報告が有ったと言っていた。】
 『早智子さんが・・・早智子さんは私と一郎さんの事・・・』
 【知っている。】
 『あぁ・・早智子さん・・ごめんなさい。・・・』
 【早智子さんに一郎さんに伝えて欲しい事が有るとお願いした。それは・・香織を抱いて欲しいと。香織と不倫して欲しいと。・・・】
 香織の涙でぬれた目が大きく見開かれる。
 『なんで、あなた。どうしてそんな事を頼むの?私を嫌いになったの?』
 【それは違う。】
 『じゃあ何故、自分の妻を他人に抱かせるの?そんなの可笑しいでしょう?スワップとは違うのよ?あれだって、あなたがしたいと言うから一郎さんに抱かれたのよ。』
 夫は何を考えて、頼んだのだろう?私の中に夫への不信感が芽生えてきた。
 何か別の事から目を逸らす為・・・若しかしたら、健一は誰か他に女が居たのかも知れない。そう思うようになった。
 【そのSWだ。あれが切っ掛けなんだ。】
 『・・・・・・』
 【僕はあの時、一郎さんに抱かれる君を、早智子さんと椅子の陰から覗いていた。実際には見えなかったが、二人の会話、香織の喘ぎ声、シーツの擦れる音、ベッドの軋み、その全てが僕を異常な興奮に駆り立てた。】
 健一の目は心なしか輝きを増したように見えた。
 【愛する妻が、他の男に抱かれる。それも、自分とのセックスの時以上に乱れ、辺り憚らぬ大きな声で逝ってしまう。嫉妬した。もの凄く嫉妬した。それと同じ位興奮した。隣に早智子さんが居なければ、自分でペニスを握りしめ、自慰していただろう。
  一郎さんを拒否してくれ、感じないでくれと祈りながら、反対にもっと一郎さんを求めろ。今までに無いくらい感じてくれ。性の虜になるくらい淫乱な女になってくれと願う自分が居た。】
【香織が気を遣るたびに、得体の知れない願望が僕を覆った。それは・・僕の知らないところで男に抱かれたらどうなるのか。香織は男の誘惑に負けて僕を裏切るのか、それが知りたくなったんだ。男に抱かれた後、香織は僕にどう接するのか?どんな嘘をつくのか?】
 『ちょっとまって。あなた・・・・私が裏切るのを望んでいたの?そんな女になった私を愛せるの?私が、もしその男にカラダだけじゃなく心まで奪わたらどうするの?心配はしなかったの?』
 香織はみじめな気持で健一に尋ねた。私は夫を裏切る妻だと思われていた。情けなくなった、そして夫を裏切ってしまった。・・・自分を嫌悪した。
 【そこまで考えていた。でも僕は寝取られのマゾヒスティックの虜になっていた。寝取られる事に悔しさと快感を覚えてしまうんだ。だから、早智子さんに連絡して一郎さんに寝取って貰った。香織が知らない事は一郎さん達には話してなかった。彼らは僕と香織が承知していると思っていたはずだ。でも僕はそれでは香織が本当に寝取られた事にならないと考えた。】
 『・・・どうしてなの?どうしてそこまでしたの?』
 【愛しているからだ。香織を・・体と心を奪われても、いつか僕の元へ帰ってくれることを、狂おしいまでの嫉妬と興奮で待ち続けたいと願ってしまうんだ。】
 健一の性癖の告白に香織は驚愕し、そして夫を可哀そうな男と思った。
 この可哀そうな男が夫、何のために苦悩してきたのだろう。
 夫を裏切る罪悪感と徐々に離れ難くなる体の疼き。必死に留まろうと、眠れぬ夜を耐えて耐え切れなくて、一郎の子を生み決別しようとギリギリに選択をした。
 そうしなければ健一の元へ戻れないほど一郎の虜になっていた。一郎に抱かれ絶頂を極めさせられると・・・思考は停止し自分はもう二度と健一の元へは帰れない体になってしまったと、布団の中で人知れず泣いた。あの優しい夫に狂気が宿ってしまった。

『あなたは、それで良かったのかもしれないけど、私はどうなるの。私の気持ちはどうなるの。私にはあなたを責める資格はないわ、一郎さんに心まで捧げる積りでいたから。あなたが何を企もうと、私があなたを裏切ったのは事実よ。あなた以上に罪深い事を考えていた私は、あなたを責める積りはないわ。』
 香織の言葉に、少し安堵の笑みを浮かべた健一は、次の言葉に打ちのめされた。

 『あなた・・・私あ、なたとしばらく離れて暮らします。いいえ、単身赴任期間が終わっても、あなたの元へは帰りません。こんな罪深い二人が一緒にいても幸せになれるとは思いません。あなたに、告白します、私は一郎さんの子供を産もうとしていたの、そしてあなたに秘密にしてあなたの子として育てようとした。あなたの事は愛しています、それは変わらないと思っていました。ただ愛する人が一人では無く二人だった。あなたと一郎さん、どちらも同じ位愛してしまった。』
 【に、妊娠しているのか?】
 『いいえまだよ。でも危険日に中に出して貰ったから、多分妊娠すると思うわ。』
 【どうする積りだ・・】
 『・・・・・それを考えたいから、離れるの。でもあなたはそれで満足でしょう?愛妻が別の男の人の子を産むのよ。嫉妬するでしょう、その子を見るたびに私と一郎さんが何をして妊娠したか想像すると興奮するでしょう。家で待っていてね、元気な赤ちゃんを産んで連れて帰るから。今決めたわ。』
 思いがけない言葉に健一は茫然と香織を見つめるだけだった。
 自分が撒いた種がこれほど大きくなるとは予想もしなかった。取り返しのつかない事をした。後悔が健一を襲う。
 『早智子さんの連絡先教えて下さい。私から報告するわ。一郎さんの子を生みますので宜しくって。同じ男の人の子を産んだ女同志、判り合えると思うの。愛する男が一緒なんですもの。』
 【香織止めてくれ。お願いだ産むのは止めてくれ、頼む。僕が悪かった。】
 『良いじゃないの。貴方にとって私は自分の性癖を満足させるだけの存在ですもの、貴方に満足して頂けたらそれで良いわ。ね、あなた。』
 香織の言葉には棘が有る。健一はひしひしと感じた。
 『あなた・・水一杯頂戴。』
 健一がキッチンからミネラルウォーターの瓶を持ってきた。ガス入りのペリエだった。
 『違うわ、ノンガスタイプのよ。炭酸は未来の赤ちゃんに悪いもの。』
 香織は一息でクラスの水を飲み干し。
 『・・・はぁ~・・』
 深いため息をついた。

 『早智子さん・・お久しぶりです、香織です。』
 「まあ、香織さん。お元気?・・・じゃないみたいね。」
 香織の声は沈んでいた。
 『早智子さん、一郎さんもそこにいます?いえ、出さなくても結構です。今日はお二人にお話が有ります。・・私・・健一と別居します。一郎さんとも会いません。それだけお伝え下さい。さようなら。』
 「ちょ、ちょっと待って香織さん。」
 『もうお話する事はありません、さようなら。』
 「判ったわ、何も言わない。私の独り言だけ聞いて。・・私、健一さんの事慰めてあげる、貴女の分まで健一さんを大切にするわ。一郎も公認だから・・じゃあね。」
 プツン・・・ツー、ツー・・・早智子の方から電話が切られた。
 携帯を握り締め香織が嗚咽する。声にならない泣き声が香織の部屋に木霊する。


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