【ドルチェ・アマービレ】(22)

 大学からの帰り道、私は教授に抱かれ車中にいた。
 お尻が痛くてまともに座れない。後部座席で教授に支えられ横抱きにされていた。
 タクシーの運転手さんはバックミラーでチラチラ私たちを確認し、訝しげな顔を浮かべる。
 【その角を右に50m位行った所に音楽教室の看板が有ります。そこで降ろしてください。】
 此処は何処なのだろうか?初めて来た場所。
 閑静な住宅街の奥まった所にそれは在った。
 周囲は今時の新興住宅地でモダンな建物が並んでいたが、そこは周囲に隔絶した空間を形成する、森林と見まがう鬱蒼とした木立に囲まれ、重々しい門扉が行く手を阻んでいた。
 教授は清算を済ませると私の腰に手を廻し、肩に担ぎ上げゆっくりとした歩調でその門扉の方へ向かう。
 門扉は辿り着く前に、音も無く内側に開く。門柱の呼び鈴も押さず、監視カメラの姿も見えないのに、まるで見ていたように門扉が開いた。
 それは屋敷と言う表現がぴったりの洋館だった。
 門から洋館の車寄せまで直線で数十メートル、この辺りでは広大な敷地と言うべき土地に建っている。
 重厚な扉にあるノッカーに手を掛ける必要も無く、内側から開かれる。
 木の軋む音が洋館の歴史を物語る。最低百年は経ている。
 開けたのは、シルバーグレイの髪の毛を持つ男性。
 「お帰りなさいませ、旦那様。」
 【ただいま。済まないけど、今から食事を用意して下さい。】
 「畏まりました。お嬢様、何かご希望がおありでしょうか?」
 『え?あ、あの・』
 二人の会話をうわの空で聞いていた私は、不意に尋ねられて、言葉に詰まる。
 【簡単なもので良いよ。何時もの食事で構わない。着替えてくるから、綾歌君を頼む。あぁ、紹介するのを忘れていた、この女性は・・・・綾歌君は私のレッスン生です。綾歌君、彼は、バトラーです。少し待っていてください、あぁ、そうだ、ハウスキーパーに頼んで、綾歌君の服装を整えておいてくれ。、じゃあ、ちょっと失礼して・・ランドスチュワードは来ている?】
 多分職名だと思うけど、バトラーとハウスキーパーの名前だけは聞いた事がある。
 バトラーは執事でしょう。ハウスキーパーは・・・あれ?家の管理人の事よね?
 私が悩んでいた事を相手が教えてくれた。
 「ただ今ハウスキーパーが参ります。彼女がこの屋敷の女性従業員の管理を取り仕切っております、何でもお申し付けください、お嬢様。」
  ふう~ん、だとするとバトラーは男性従業員の管理ね。ランドスチュワードは何だろう。?
 この疑問も教えてくれた。
 「ランドスチュワードは昔は主人の領地の管理をする役目を負い、農地を賃貸し、借地料を徴収し、境界線を調査し、テナントの間の争いを調停し、領収・支出の細かい記録を保管する役目でした。日本語では家令と訳される事も有ります。今なら管財人でしょうか。」
 教授の家はどんな資産家なんだろうか?
 そこへ女性がやってきた、年齢は40代だろうか?私服ではあるが、まるで霞ヶ関のキャリア女性の様な姿、女中とかメイドとかのイメージは無い。
 「お嬢様、どうぞこちらへ、お召し替えを致します。」
 連れて行かれたのは2階の客間らしい部屋。南向きの気持ちの良さそうな部屋、庭がらよく見える。
 車寄せのロータリーは中が丸い池のようになっていて、池の中央に彫刻が施された立像、瓶を肩に担いだ女性像があり、その瓶から噴水が出ている。そしてその池の周りは8分割された花壇に取り囲まれる構造で、色鮮やかな花が植えられて居て目を楽しませる。


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写真は・・・・いけないんだぁ

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