【疑惑のテンポラリーファイル】(4)

3月に甥の結婚式があり、この時は日帰りで出席しました。新婦のご近所の席に見覚えのある名前が載っていました。
 そのK子さんが私に気づき、お酒を注ぎに来てくれました。
 『みゆきさんのご主人様ですよね、K子と申します。みゆきさんにはパート先で大変お世話になっていました。』
 と、あいさつされましたので私も。
 【こちらこそ妻が大変お世話になりまして、この間は温泉に誘って頂いたとか、仲良くして頂き有難うございました。】
 と。返答しました。
 すると、K子さんは困ったような顔付になり、早くこの場を立ち去りたい雰囲気を出したので、聞いて見ました。
 【あのう・・どうかされました?】
 『・・・・・・・・』
 K子さんは益々困惑した表情を浮かべます。
 『あの時は残念でした。直前になってみゆきさんから、ご主人の許可が出なかったと仰られて・・・それに・・・パートも昨年末で止めてしまったので、どうしているのかと気になって、お声を掛けたのですが・・・』
 (パートを辞めた?温泉に行っていない?)
 どう言う事なのか私にも判りません。妻が何を考えているのか、何をしているのかさっぱり判りません。K子さんの貌が益々不審なものになってきましたので、適当にごまかしてその場を逃げるように後にしました。甥には途中で退席しなければならない非礼を詫び、いとこにも嫌味を言われながらアパートに帰りました。
 家に寄りたかったのですが、長女にも逢いたかったのでユミのアパートに足を向けました。
 『お父さん、A雄さんの結婚式だったのでしょう。忙しいのに大変ね。お母さんに代わりに出席して貰えば良かったのに。K子さんとS恵さんと旅行だなんて間の悪い事。』
 【え?K子さんはA雄の結婚式に来ていたよ。日にちでも間違って聞いたんじゃないのか?】
 『そんな筈ないわ。・・・・お父さん、この所お母さんの様子が変なの。何か知らない?』
 【お父さんが聞きたいよ、K子さんの話だとパートも年末で止めたそうだし、何が何だかさっぱり判らない。お母さん、淋しくて鬱になったとか、病気に罹ったのじゃないだろうか?】
 真面目で何事にも完璧を目指す妻の性格から、子育てが終わり、夫も単身赴任で気が抜けてしまって、心の病に罹ったのではないか、とその時は思いました。
 【ユミ、悪いけどお父さんの代わりに、お母さんを見ていてくれ。】
 私は娘に頼んだ後、とんぼ返りで赴任先に戻りました。気にはなったのですが、どうする事も出来ません。

 『あ、あなた明日はそちらに行きますね。何が食べたいもの有ります?』
 今回は予定通り妻がやって来ます。その時にK子さんの話をする積りで、
 【お昼には手作り野菜餃子が食べたいな。夜は久しぶりに何か食べに外へ出よう。】
 今夜の妻は大分快活に話をするようになりました。気分が良いのだろうと思い、誘いました。
 『どうしたの?珍しいわね。いつもはアパートで料理を作るように求めるのに。』
 妻の言うとおりです。普段外食の私は家庭料理に飢えていますので、外へ出たがらないのです。
 【偶にはデートしよう。レストランを予約しておくよ。】
 
午後2時、昼前に着く予定の妻が来ません。
家に電話しても、携帯に電話しても通じません。何か有ったのかと凄く心配していたら、TVで緊急放送が行われています。ニュース番組を食い入るように見ました。
 新幹線の脱線事故です。大きな地震により脱線事故を起こした新幹線に妻が乗っている可能性が大きいのです。
 今の所死者はおりません。ケガ人で名前の判った人から、テロップで流されています。大きな事故の割に、ケガ人が少ないようです。
 新潟での脱線事故以来JRも新幹線の安全性を高めていたのが幸いしたようです。地震の方も奇跡的に死者が居ませんでした。
 テロップに30~50代のの女性が重傷と流されました。
 その時です、携帯が鳴りました、妻からです。
 慌てて出ると女性の声で、○○警察と名乗り、私の名前を確認すると妻が事故に逢い重傷であることが告げられました。
 【重傷って命に別条は無いんですか?どこに運ばれたんですか?娘達には連絡してくれたんですか?】
 「ご主人慌てないで落ち着いて下さい。ええ、重傷ですが命の危険は無いと医師の報告に有りました。娘さんがいらっしゃるのですね。この携帯にはご主人から本日の着信履歴以外なく、また番号登録も無いため、身元確認の為連絡して見たのです。」
 妻の携帯は娘達との連絡用に買ったと聞いていたのに、娘の携帯番号が登録されていない訳が無いはず。訝しく思いながら妻の容態の方が気になり、病院名と住所・番号を聞いて切りました。
 娘達に電話して、妻の事を頼み私はすぐに駅に向かいました。在来線はもうすぐ開通の見通しがついたと、報道が有ったからです。
 午後10時頃病院に着くと妻は薬が効いて寝ていました。
 病室の入り口で娘に聞くと医者から完治まで6ケ月ほど掛かるかも知れない、右足が骨折し左手も薬指が骨折したと聞かされたとの事でした。入院そのものは約3ヶ月、リハビリも順調に行けばとの説明です。
 漸く病室に入ると、辛そうな妻の寝顔と足を吊られた痛々しい姿が見えました。
 その晩は、特別の計らいで病室に泊らせて頂き、様子を見ていましたが朝になっても目覚めないため、一旦家に帰り妻の着替えを取りに戻る事にしました。


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