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【疑惑のテンポラリーファイル】(6)

 病院に妻を見舞い、少しの間話をして直ぐに赴任先に戻りました。まだ新幹線が復旧していないので在来線です。
 【どうだ、何か不自由な事有るか?】
 『あのね・・・消臭剤を買ってきて欲しいの。』
 妻が恥ずかしそうに言います。
身動きが取れない患者は、膀胱にバルーンで固定したカテーテルを通し小水を溜めて看護師に処理して貰います。或いは尿瓶を使いますで
困るのは大きい方です。
病気で入院しているのなら食事が量も含めて制限食になるのですが、骨折等で入院した場合、健康な状態での入院に限りますが、食事に制限が無く、間食も自由です。
 寝たきりでいると、する事が無いので、TVや本・雑誌か大部屋なら同室の人とのお喋りで暇を潰すしかありません。
 そうなると、家から持参した電気ポッドでお湯を沸かし、お茶をしながらおやつをついつい食べてしますのです。
 食べたら排泄するのが生き物の生理。身動きが出来ないので、ベッドの上でしなければならないのです。
 これは非常に辛い事です。周りに人がいる状況で大便をするのは恥ずかしくて堪らないはずです。
 匂いも音も出さないで出来るなら我慢も出来ましょうが、そう言う訳にも行きません。
しかし排泄を我慢すれば便秘になり、お腹が苦しくなるばかりか、診察により医師の判断で浣腸をされ、強制的に排泄をしなければなりません。
 今は介護用のオムツを利用して排便する事が出来ますから、恥ずかしさを我慢し何とか布団を掛けその中でしてしまい、音を最小限にする事が出来ますが、匂いはどうする事も出来ません。それで消臭剤を求めたのでしょう。
 私も昔入院した時に、ベッドの空きが無く形成外科病棟に入れられた事が有りますが、6人部屋で片側3人づつのベッドの真ん中に居た時は地獄みたいなものでした。
 両隣りは身動きの出来ない患者、食事も排せつもその場で行うのです。
 耳を塞いでも匂いだけは我慢出来ませんでした。1日で音を上げ医師に訴えましたが、病室が変わったのはそれから5日後でした。
 【大丈夫、買って来てある。スプレーと置くタイプの両方だ。それからオムツも買い足しておいた。これが、雑誌、テレビカード、ipod・・・】
『ごめんなさい、有難うあなた。』
 妻が涙を浮かべています。部屋に誰も居なければ抱き締めてしまいそうなほど、意地らしい姿です。
 仕方なく手を握り髪の毛を撫でて気持ちを伝えました。
 【そろそろ戻らなくては。後の事はユミ達に頼んで有る。心配せず、早く良くなれ。】
 私は頭の位置に有る小さなテーブル兼収納台の引出しを開け、その中にテレビカードを入れようとしました。
 『あっ。』
 妻が小さな声をあげます。聞こえない振りをして引出しを全開にしました。
 そこには携帯電話が置いて有ります。それを取り上げ妻に言いました。
 【病院では携帯電話の使用禁止はだろう。鍵の掛からない引出しに置いておくのも物騒だ。家に置いておこうか?】
 『え、ええ、でも・・・必要になるかも知れないし。』
 妻の躊躇いに、さっき心が通ったと思った気持が急速に冷めて行きます。
 【頭の上の電話、さっきのテレビカードを差し込めば、外との連絡が出来るのだろう。携帯が必要だとは思えないな、それとも何か不都合なことでも有るのか?】
 言ってしまってから、自分自身に嫌悪を抱き、妻から目を逸らそうとしました。しかし、眼の端に私以上に狼狽し困った顔の妻を見つけ動きを止め、逆にマジマジと妻を、妻の顔を睨みつけていました。
 『持って帰って良いよ。でもメールは見ないでね、お友達の相談メールが有るから。』
 目を逸らし俯いた妻が言いました。
 私は冷え冷えとした気持ちのまま病室を後にし、自宅に戻り、妻のノートパソコンをケーブルから外し持ち出しました。
 アパートに着いたのは深夜、冷え切った部屋の明かりを付け、薬缶に水を入れ湯を沸かす用意をしました。
 風呂場に行き風呂の用意もしました。
 冷えた心と体を温めてから、妻のノートPCを起動させようと思いました。
 湧いた湯をポットに注ぎ、風呂に入りに行きます。
 脱衣所で、服を脱ぎ風呂に入ろうとして自分の裸を見てしまいました。
 腹は出ていない、未だに普通体型だけど、陰毛に白いモノが見え、カラダの張りが衰えている様子を見てしまいました。
 妻はみゆきはこの体の衰えを嫌ったのだろうか? 心は?離れていないよな?それなのに何故?
 何かの間違いか? みゆきを疑うなんて、私は・・
 みゆき・・・おまえは何を考えている? 

 冷えた体は温まりました。が、心は冷えたまま。帰りがけに買ってきたコンビニ弁当を開け、沸かした湯でお茶を入れ遅い夕食を取ろうとしました。
 砂を噛んだような感触に一口だけで終わりにし、テーブルの上のPCに目を遣りました。
 印刷した紙も取り出し、PCの電源スイッチに指を置き押そうとします。
 手が震え押せません。このPCに妻の未知の世界、未知の生活が隠されているのかと思うと、押すのが躊躇われてしまうのです。
 結婚して23年幸せだと思っていた生活が脆くも崩れ去ってしまうかもしれないと考えると押せません。時計も深夜2時を指しています。
 私は一つため息を付くと、今夜は止めておこうとPCから離れてしまいました。
 情け無い男です。自分はこんなに弱い男だったのか?
 ベッドに寝ても目が冴えて眠れません。結局4時過ぎに眠りについたようです。
 翌朝の目覚めは悪く寝不足で目が充血し、肌もカサカサになっていました。


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