回想録 ~二人の玲子~

 『もしもし・・・はい。・・・いいえ、違います。ええ、そうです。』
 私の電話に出た玲子のそっけない返事に、近くに玲子の旦那の姿が見えるようだった。
 「旦那が近くにいるのか?」
 『はい。』
 「明日昼2時に待つ、良いね?」
 『・・・・はい、判りました。』
 少しの躊躇いの後で玲子は承諾の返事をした。


 3月21日(金)
 
 「困るんですよね。・・弁償してくださいよ。」
 知り合いの古美術商の店に顔を出すと、女性が店主に文句を付けられていた。
 店の床には磁器の破片が散乱している。
 どうやら展示品を破損したらしい。展示場所の値札を見るとゼロが7桁並んでいる。
 (うわ~千万単位かよ。ここにそんな値の張るものがあったかな?)
 親父が私に気付いたようで、
 「あ、先生いらっしゃい。すみません散らかっていて。」
 「どうしたの?」
 「いや~困りました。・・実は・・・先生のところから預かった大皿をこの女性が割ってしまって・・」
 「え?」
 (なんだ~?俺のところから?・・値札なんて付けやがって、この狸親父・・俺の皿で商売しようと思ったのか・・・)
 『済みません。私が悪いんです』
 女性が声を掛けてきた。
 目に付いたのはフリルの付いた白いブラウスを持ち上げる隆起・・・大きなバストとむちっとしたお尻を隠すタイトなスカート・・・何より、それらを全て凌駕する美貌が真っ直ぐ私を見ている。
 「ああ、そうなんですか?ちょっと事情が飲み込めないので・・・親父さんどう言う事?私の皿って・・・値札が付いているけどあれは売り物じゃないよ。」
 「へえ・・すいません先生。店の箔付けのためにお借りした大皿・・・この間有名鑑定家が○千万円の値を付けたので・・・大いに宣伝しようと・・つい値札を・・」
 「ははっ、そう言う事か・・」
 壊れたものは仕方が無い。
 どんな値に付くものでも壊れれば唯の破片だ。
 「先生・・必ず弁償しますから・・・弁償してくれますよね。」
 私に話していた親父が女性に向かって怖そうな顔を向ける。
 『申し訳ありません・・・必ず・・弁償いたします。・・・でも・・・一度には・・・』
 「だから、それは困りますよ。私が立て替えられる金額を超えてるんです。一度に・・せめて2度位で弁償してください。」
 親父が捲くし立てる。
 俯いた女性の顔は蒼白だった。
 『どうかお願いします。・・・主人に話して何とか半額は直ぐにでも弁償いたします。でも・・・後の半額は・・・今はお支払いできないんです。』
 (可哀相に・・・値段なんか・・・勝手に付けたものだろうが・・・)
 「・・・・弁償する必要は有りません。気になさらずに・・親父さんも、この方を責めないで下さい。・・値段は勝手に付けたものでしょう?造った本人が言っているのだから、もう良いでしょう、許して差し上げてください。」
 私は女性をじっと見つめていたことに気恥ずかしさを憶え、そう言うとさっさと店を出てきてしまった。
 (美しい人だったなぁ・・・ご主人が羨ましい・・・)
 

回想録 ~二人の玲子~ 2PageTop【妻の秘密・義妹の秘密】(32)

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写真は・・・・いけないんだぁ

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