回想録 ~二人の玲子~ 9

 4月16日(金)

 「ふう~出来た。玲子さん悪いがこれの写真を編集部へ届けてくれるかな?」
 『はい、月刊陶芸ですよね。行ってきます~』
 月刊陶芸は、毎月コラムを載せている、もう5年の付き合いだ。編集長の中澤は妻の従兄弟だ。コラムは失意の私を立ち直らせようと、色々してくれた中澤が編集長になったとき、恩を返すために始めたものだ。
 遅いなぁ、もう7時過ぎだぞ。そう思っていたら中澤から電話がある。
 「やあ章雄君、君の秘書は愉快だねぇ。今カラオケに来てるんだけど、迎えに来てくれないか?」
 「はぁ?・・・」
 「ちょっと飲み過ぎたみたいなんだよ。さっきからマイク離さないで歌いっぱなし・・・悪い。助けてくれょ~」
 車で編集部近くのカラオケ店に迎えに行った。

 「玲子さん、起きて。ご主人が心配するよ。」
 玲子は眠っていた。
 涙が一筋目尻を伝い流れていた。
 『うぅ~ん。あれぇ?先生?ここどこ?』
 まったく、こんなに飲んで。
 「さあ、もう遅いしご主人が誤解するだろう?帰りは送るよ。」
 『あ~、あと一曲入っている~。ねえ、先生これ歌ってからね。』

 『ビルが見える教室で ふたりは机並べて 同じ月日を過ごした』 
 
『低い雲を広げた 冬の夜 あなた夢のように 死んでしまったの』
『今年も海へ行くって いっぱい映画も観るって 約束したじゃない』
『あなた 約束したじゃない』
『会いたい』

 私は頬を伝う熱いものが何か、最初判らなかった。
 玲子に指摘されて気付いた。
 美穂を妻を思い浮かべて居たのだ。
 玲子は私の涙を見て、ハッとした様子で酔いが醒めたらしい。
 『ご免なさい、帰ります。』
 
涙の訳を聞かず、じっとフロントグラスを見つめる玲子の横顔は、街灯の灯を反射して一幅の絵画の様に見えた。


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写真は・・・・いけないんだぁ

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